ジャクソンホールの焦点とその後の相場展望

市川レポート(No.430)ジャクソンホールの焦点とその後の相場展望

  • 足元のやや不安定な市場の動きなどを勘案すれば、イエレン議長からのタカ派発言は見込み難い。
  • ユーロが上昇するなか、ドラギ総裁からも金融政策の正常化に関して、踏み込んだ発言はなかろう。
  • 今回は無風通過の方が市場に安心感が広がりやすいが、リスクオンが強まるのは10-12月期頃か。

 

足元のやや不安定な市場の動きなどを勘案すれば、イエレン議長からのタカ派発言は見込み難い

米カンザスシティー地区連銀は毎年、ワイオミング州ジャクソンホールで経済シンポジウムを開催しています。通称「ジャクソンホール会議」と呼ばれるこのシンポジウムでは、各国中央銀行のトップが集い、学術的な議論が交わされます。今年のジャクソンホール会議は、8月24日から26日まで開催されますが、市場では25日のイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長とドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁の講演に注目が集まっています。

イエレン議長の講演は、「金融の安定」というテーマで、日本時間8月25日午後11時から始まります。米金融政策の次なる一手の手掛かりが示されるか否かが講演の焦点です。ただ、足元のやや不安定な市場の動きや、9月19日、20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)におけるバランスシート縮小開始の通知がほぼ織り込まれていることを勘案すれば、イエレン議長が今回、あえてタカ派発言に踏み込む必要性は低いように思われます。

 

ユーロが上昇するなか、ドラギ総裁からも金融政策の正常化に関して、踏み込んだ発言はなかろう

ドラギ総裁の講演は、イエレン議長の講演から5時間後、日本時間8月26日午前4時から始まります。こちらも、段階的な量的緩和政策の縮小(テーパリング)に関するヒントが期待されていましたが、8月16日にロイター通信が、今回の講演で金融政策に関する新たなメッセージは打ち出されないという関係筋の話を報じると、今回は無風通過になるとの見方が市場に広がりました。

ドラギ総裁は6月27日、ECBの年次フォーラムで、景気回復につれて政策手段のパラメーターを調整できるようになると述べ、金融政策の正常化に前向きな姿勢を示しました。その後、ユーロは対米ドルで大幅に上昇し(図表1)、6月26日から8月23日までの上昇率は約5.6%に達しています。ユーロ高の進行は、物価の押し下げ要因となるため、ドラギ総裁から、市場に金融政策の正常化を一段と強く意識させるような発言はみられないと思われます。

 

今回は無風通過の方が市場に安心感が広がりやすいが、リスクオンが強まるのは10-12月期頃か

以上より、注目度の高いイエレン議長やドラギ総裁の講演ではありますが、今回はあまり目新しい材料が出てこない可能性があります。ただ、北朝鮮リスクや米トランプ政権の混乱で、市場は幾分リスクオフ(回避)に傾きやすい地合いにあるため、むしろ無風通過となって、米国もユーロ圏もゆるやかに金融の正常化を進めると解釈された方が、市場には安心感が広がりやすいと考えます。

その場合、米長期金利と米ドルの上昇余地は限られますが、米株は底堅さが戻ると思われます。またユーロは対ドルで一時的に小幅な調整売りが出回る恐れがありますが、市場に大きな混乱が生じる可能性は低いとみています。なお、リスクオンの回復には、①朝鮮半島情勢を巡る緊張の後退、②米議会の再開、③秋口に見込まれるバランスシート縮小の無難な開始、などが必要であり(図表2)、10-12月期頃には、その動きが強まるのではないかと思われます。

 

 

 

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(2017年8月24日)

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