大型連休明けの相場展望

2017/05/09

市川レポート(No.387)大型連休明けの相場展望

  • 大型連休中の重要イベントは波乱なく通過し、世界の金融市場も総じてリスクオフ修正の動きに。
  • 欧州政治リスクは後退したがイタリアには要注意、韓国大統領選挙はその後の米韓関係に注目。
  • 慎重な見極めを要する材料も多く、日経平均の2015年6月高値更新は平坦な道のりではない。

大型連休中の重要イベントは波乱なく通過し、世界の金融市場も総じてリスクオフ修正の動きに

日本で大型連休となった先週、世界の金融市場では米国や欧州を中心に株高と長期金利上昇の動きが目立ちました。為替もリスクオフ(回避)修正の流れのなかで円安が進行した一方、フランス大統領選挙でのマクロン氏勝利を織り込む形でユーロ高が進行しました。また原油や鉄鉱石価格が調整色を強めたことを受け、資源国通貨は総じて軟調に推移しています。

注目された大型連休中の重要イベントも波乱なく通過しました。5月2日、3日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、1-3月期の成長鈍化は一時的である可能性が指摘され、また5月5日に発表された4月の米雇用統計は、緩やかな利上げ継続が正当化される内容となり、市場では6月の米利上げがほぼ織り込まれました。そして5月7日に行われたフランス大統領選挙の決選投票は、予想通りマクロン氏の勝利となりました。

欧州政治リスクは後退したがイタリアには要注意、韓国大統領選挙はその後の米韓関係に注目

マクロン氏は、法人税の減税と労働市場の改革を政策の目標としています。フランスでは6月11日、18日に国民議会(下院)選挙が行われますが(図表1)、政策に共通点が多い共和党主導の議会となれば、マクロン氏の政策は実現されやすくなります。欧州の政治リスクはいったん後退と考えますが、イタリアの動向には注意が必要です。イタリアでは大衆迎合政党の五つ星運動の支持率が高く、ユーロの支持率が低いため、市場では早期解散総選挙への警戒が残ります。

北朝鮮を巡る地政学リスクも過度な悲観は後退しつつありますが、5月9日に行われる韓国大統領選挙は、結果次第で今後の朝鮮半島情勢に大きな影響を与える可能性があります。現在の支持率トップは、北朝鮮に融和的な政策を掲げる革新系野党第1党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)氏で、40%前後を保っています。仮に文氏が圧勝し、北朝鮮を巡る米韓の足並みが揃わなくなった場合、市場に不透明感が広がる恐れもあります。

慎重な見極めを要する材料も多く、日経平均の2015年6月高値更新は平坦な道のりではない

このところ軟調な原油相場の材料も整理しておきます。イランでは5月19日に大統領選挙が行われますが、トランプ米政権がイランを敵視する立場を鮮明にしていることから、反米保守強硬派のライシ師らが、保守穏健派のロウハニ大統領を追う展開となっています。ただロウハニ大統領再選でも対米強硬路線色が強まる可能性があり、両国の対立が深まれば、中東情勢不安定化の見方から、原油高に振れやすくなると思われます。

また5月25日には石油輸出国機構(OPEC)総会が開催され、減産合意延長の是非について判断が示される見通しです。延長の有無を巡る思惑でも相場の変動性は高まりやすいことから、原油相場はしばらく不安定な動きが予想されます。大型連休明けで過度なリスクは後退したものの、慎重な見極めを要する材料も多いため、ドル円の115円台回復や、日経平均株価の2015年6月高値(20,952円71銭)更新は、平坦な道のりではないと考えます。

 

 

170508図表1

 

(2017年5月8日)

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