米対日貿易赤字の中身を検証する

2017/02/10

市川レポート(No.351)米対日貿易赤字の中身を検証する

  • 2016年の米貿易赤字は国別1位が中国、2位は日本、財別では1位消費財、2位自動車等に。
  • 自動車は対日貿易赤字の51.1%、全体でも4.7%を占め、米国から批判の矛先が向けられた。
  • ただ米国にとって対日自動車貿易は最大懸念事項でなく、対中通商交渉の方がより重要となろう。

2016年の米貿易赤字は国別1位が中国、2位は日本、財別では1位消費財、2位自動車等に

米商務省は2月7日、2016年の貿易統計(通関ベース)を発表しました。それによると、財の貿易赤字は前年比で1.5%減少し、7,343億ドルとなりました。貿易赤字を最も計上している国は中国で、3,470億ドルと全体の47.3%を占めています。2位は日本で689億ドル(シェア9.4%)、3位はドイツで649億ドル(同8.8%)、4位はメキシコで632億ドル(同8.6%)でした。

財の内訳をみると、貿易赤字を最も計上している財は消費財で、3,901億ドルと全体の53.1%を占めています。2位は自動車等で2,003億ドル(シェア27.3%)、3位は資本財で706億ドル(同9.6%)、4位は工業用品で460億ドル(同6.3%)でした。以上は2016年の米貿易赤字の全体像ですが、今回のレポートでは対日貿易赤字に注目し、その中身を検証します。

自動車は対日貿易赤字の51.1%、全体でも4.7%を占め、米国から批判の矛先が向けられた

2016年については国別・財別の詳細なデータが現時点で公表されていませんので、以下2015年のデータを使用します。2015年の対日貿易赤字は689億ドルでしたが、財の内訳をみると、自動車等が485億ドルで対日貿易赤字全体の70.4%を占めています。2位は資本財で289億ドル(シェア41.9%)、3位は消費財で5億ドル(同0.8%)、食品・飲料は110億ドルの黒字でした。

このように対日貿易赤字の中身は自動車等の赤字がほとんどで、更に詳しい品目をみていくと、乗用車(新車・中古車)が352億ドル(シェア51.1%)、その他自動車部品・アクセサリーが81億ドル(同11.8%)となっています。つまり乗用車が対日貿易赤字の約半分を占め、貿易赤字全体(2015年は7,457億ドル)でも4.7%を占めることから、トランプ大統領は批判の矛先を対日自動車貿易に向けたと思われます。

ただ米国にとって対日自動車貿易は最大懸念事項でなく、対中通商交渉の方がより重要となろう

第2次安倍政権が誕生した2012年から足元まで、大幅なドル高・円安が進行しましたが、その間、自動車等の対日赤字は減少傾向にあります(図表1)。単純にこれだけみても円安で赤字は減少しています。また強硬な対日通商政策を推進したクリントン大統領が就任した1993年当時、対日貿易赤字のシェアは51.4%で、対中貿易赤字は19.7%でした。しかしながら現在は前述の通り、それぞれ9.4%、47.3%となっています(図表2)。

なお2015年の対中貿易赤字の詳細をみると、携帯電話等が625億ドルと貿易赤字全体の8.4%を占め、衣服が457億ドル(シェア6.1%)、コンピューターが427億ドル(同5.7%)となっており、いずれも日本の乗用車の352億ドルを上回ります。そのため日本の自動車貿易は、少なくとも米国にとって最大の懸念事項ではないと推測されます。対日通商交渉は2月10日の日米首脳会談後も継続すると思われますが、米国には対中通商交渉の方がより重要な意味を持つとみられます。

 

170210図表1170210図表2

 

 (2017年2月10日)

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