FOMCメンバーの金融政策スタンスを更新
市川レポート(No.298)FOMCメンバーの金融政策スタンスを更新
- タカ派のブラード総裁は極端なハト派に転じ、ハト派のローゼングレン総裁はタカ派度合いが増す。
- このような金融政策スタンスの変化などから、利上げの見方はFOMC内でかなり分かれている模様。
- イエレン議長は早すぎる利上げに慎重と推測され、利上げ判断は9月から12月に先送りの可能性。
タカ派のブラード総裁は極端なハト派に転じ、ハト派のローゼングレン総裁はタカ派度合いが増す
米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーの金融政策スタンスについては、5月27日付レポートで一度解説しています。しかしながらその後2人の地区連銀総裁に金融政策スタンスの変化がみられたことから、今回改めて情報を更新します。なお2人のうち1人はセントルイス地区連銀のブラード総裁であり、もう1人はボストン地区連銀のローゼングレン総裁です(図表1)。
ブラード総裁は6月17日の講演で、今後2年半にわたる期間において適切な政策金利は0.63%との見方を示しました。経済は1つの状況が長く続くため、それに応じた金融政策が必要というもので、同総裁のスタンスは従来のタカ派から極端なハト派へ一気に転じました。ローゼングレン総裁はハト派とみられていましたが、9月9日の講演において、利上げを待ち過ぎれば景気過熱の恐れがあるとの警鐘を鳴らし、タカ派度合いが増しました。
このような金融政策スタンスの変化などから、利上げの見方はFOMC内でかなり分かれている模様
このような金融政策スタンスの変化や、最近のFOMCメンバーの発言を踏まえると、利上げのペースを巡る見方は、FOMC内でかなり分かれていると推測されます。例えばブラード総裁のほかにも、ブレイナード理事は自然利子率(景気を刺激も抑制もしないと考えられる金利水準)の低下などを挙げ、米国経済はニュー・ノーマル(新しい常態)にあるとし、早すぎる利上げに慎重な姿勢を示しています。
一方、フィッシャー副総裁は8月21日の講演で、米連邦準備制度理事会(FRB)は最大雇用と物価の安定という2つの政策目標に近いところにあると述べ、年内の利上げを示唆しました。ローゼングレン総裁も同様に、米国の労働市場は徐々に引き締まっており、物価上昇率も2%へ近づきつつあるという見解を示していますが、フィッシャー副総裁よりも低金利の副作用を強く懸念しています。
イエレン議長は早すぎる利上げに慎重と推測され、利上げ判断は9月から12月に先送りの可能性
FRBは9月20、21日にFOMCを開催しますが、13日から金融政策の情報発信を控えるブラックアウト期間に入っています。そして情報発信ができる最後の12日に講演を行ったのはブレイナード理事でした。市場はこれをFRBからのハト派的なメッセージと受け止め、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込む9月の利上げ確率は、9月15日に18%まで低下しています(図表2)。
利上げ判断のカギを握るのはイエレン議長の金融政策スタンスです。現時点ではブレイナード理事に近い、早すぎる利上げに慎重な姿勢と推測されますが、その場合は9月の利上げは見送られる可能性が高いと考えます。今回の会合では、イエレン議長の記者会見が予定されており、またFOMCメンバーの経済および政策金利の見通しも公表されます。利上げは12月を予想しますが、FOMCメンバーの政策金利見通しを参考に、記者会見でイエレン議長の金融政策スタンスを改めて確認する必要があると思われます。
(2016年9月16日)
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