マイナス金利下での資産運用~知っておきたい基本概念

2016/07/21

市川レポート(No.277)マイナス金利下での資産運用~知っておきたい基本概念

  • 「低成長」、「低インフレ」、「低金利」の環境では、高いリターンを安定的に得るのは一般に難しい。
  • 更に日本の場合は無リスク金利がマイナスであり、リターンを得るには相応のリスクをとる必要がある。
  • そのためリスク回避的な投資ニーズがある場合は、期待リターンが低い資産でも投資対象となる。

「低成長」、「低インフレ」、「低金利」の環境では、高いリターンを安定的に得るのは一般に難しい

6月23日に行われた英国民投票の結果を受け、金融市場は大きく動揺し、ドル円レートや日経平均株価の変動幅も急拡大しました。このような大相場を目の当たりにすると、今後はどのように資産運用を行っていけば良いのか迷ってしまう投資家も多いと思われます。そこで今回は、世界経済の見通しを踏まえつつ、マイナス金利環境にある日本の特殊事情を勘案した資産運用の基本的概念についてお話しします。

弊社では英国民投票の結果について、欧州連合(EU)離脱の連鎖が他国に広がるなどの2次ショックが発生しない限り、主要国のポリシー・ミックス(金融緩和と財政拡張)によって世界的な景気後退は回避できると考えています。ただ当面は多くの国や地域で「低成長」、「低インフレ」、「低金利」が予想されるため、資産運用で高い収益率(リターン)を安定的にあげることが、一般に難しくなると思われます。

更に日本の場合は無リスク金利がマイナスであり、リターンを得るには相応のリスクをとる必要がある

リターンは基本的に無リスク金利(リスクフリーレート)とリスクプレミアムで構成されます。リスクフリーレートは銀行間翌日物金利や国債利回りを指すことが多く、日本の場合は無担保コール翌日物金利がマイナス、国債利回りも超長期の一部までマイナスです。そのため日本円を運用して、ある程度のリターンを得るためには、リスクフリーレートがマイナスである以上、リスクプレミアムが重要な要素となります。

より大きなリスクプレミアムを享受することは、よりリスクの高い資産に投資することですので、リターンの上昇が期待できる一方、資産価格の変動幅も拡大しやすくなります。主要資産について、リスクプレミアムとリスクの大きさの関係を示したものが図表1です。このように、リスクフリーレートにリスクプレミアムを積み上げて金融資産のリターンを推計する方式を、ビルディング・ブロック・アプローチといいます。

そのためリスク回避的な投資ニーズがある場合は、期待リターンが低い資産でも投資対象となる

財務省が公表している投資家部門別対外証券投資をみると、日銀がマイナス金利政策の導入を決めて以降、対外中長期債投資の増加傾向が窺えます(図表2)。特に生命保険会社の動きが顕著で、2月から6月までの取得超過額は月平均で1兆円を超えています。仮に為替ヘッジを付けた米10年国債への投資を想定すると、年初からヘッジコストが増加しているため、円建ての期待リターンは1%に届かず、ゼロ%台前半と試算されます。

ここから言えることは、「低成長」、「低インフレ」、「低金利」の環境で、マイナス金利の円を極力リスク回避的に運用する場合、円建ての期待リターンが1%未満であってもプラス圏であれば、その資産は投資対象になるということです。マイナス金利下は基本的に運用難の世界です。この点をまず十分理解することが大切で、その上で期待リターンを得るためのリスクプレミアムを選定することになります。

160721図表1160721図表2

 

 (2016年7月21日)

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