日米欧における直近の材料整理と相場への影響
市川レポート(No.274)日米欧における直近の材料整理と相場への影響
- 参議院選挙では与党が改選過半数を獲得、大型経済対策への期待は日本株の下支え要因に。
- 米国で雇用減速懸念は遠のいたが利上げ期待は高まらず、円高リスクは日本株の重しになろう。
- イタリアの不良債権問題と英不動産ファンドの解約停止という材料に、過度な懸念は必要ない。
参議院選挙では与党が改選過半数を獲得、大型経済対策への期待は日本株の下支え要因に
第24回参議院選挙の投票は7月10日に行われ、即日開票されました。その結果、改選121議席のうち、自民党と公明党を合わせた与党が、過半数の61議席を超える議席数を獲得しました。市場では、政府による早期の経済対策が期待されていますが、事業規模や真水の金額についてはコンセンサスが固まっておらず、事業規模は10兆円~20兆円、真水部分は5兆円~10兆円との声が聞かれます。
経済対策の内容は、公共投資、消費喚起、中小企業支援策などが中心になると思われ、9月の臨時国会における審議のために、8月中には規模や内容が判明するとみられます。7月28日、29日の日銀金融政策決定会合で追加緩和が行われる可能性もあり、大型経済対策への期待と併せて、日本株の下支え要因になると思われます。なお憲法改正については、国会で発議されても国民投票で賛成票が有効投票総数の過半数に満たなければ実現しません。
米国で雇用減速懸念は遠のいたが利上げ期待は高まらず、円高リスクは日本株の重しになろう
米国では7月8日に6月の雇用統計が発表されました。非農業部門雇用者数の伸びは、前月比で28万7千人と大幅に増加しました。雇用減速の懸念がひとまず遠のいたことで、市場に安心感が広がり、同日の米国株は上昇しました。ただ5月分が前月比3万8千人増から1万1千人増に下方修正されるなど、直近3カ月の増加幅は平均で14万7千人増にとどまっています(図表1)。
そのため米国の利上げ期待はそれほど高まらず、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込む年内の利上げ確率も、7月8日時点で20.6%と、前日の11.8%から小幅上昇した程度です(図表2)。米10年国債利回りも低下傾向が続いており、日米金利差の拡大でドル円がドル高・円安方向に振れる展開はまだ期待し難い状況です。円高リスクは依然として残っており、日本株の重しとなる可能性があります。
イタリアの不良債権問題と英不動産ファンドの解約停止という材料に、過度な懸念は必要ない
先週は、イタリアでの不良債権問題と、英国での不動産ファンドの解約停止という2つの材料に相場が反応しました。前者は英国の国民投票の結果に起因するものではなく、イタリア政府が問題を抱える大手銀行に資本注入する場合、欧州連合(EU)のルールにより、家計などが多く保有する劣後債の元本も強制削減となるため、懸念されているだけです。
つまりこれはイタリアに限った話であり、金融システム不安が他国に飛び火する類のものではありません。また英国の不動産ファンドについては、解約請求の急増で換金のための不動産売却に時間を要することから、一時的に解約を停止したものとみられます。仮に多くの企業が英国から撤退し、英国の商業用不動産価格が低下しても、企業が移転した先の国では商業用不動産価格が上昇しやすくなりますので、これも金融システム不安につながるものではありません。したがって、これら2つの材料を過度に懸念する必要はないと考えます。
(2016年7月11日)
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