G20とドーハ会合を経た日本株の展望

市川レポート(No.238)G20とドーハ会合を経た日本株の展望

  • G20では最近の円高進行について米国側が秩序的との見解を示し、円高リスクは残ったままに。
  • ドーハ会合でも生産量維持の合意に至らず、産油国間の歩み寄りは非常に難しいことを露呈。
  • 次の焦点として企業決算であく抜け感が出るか、政府の経済対策が市場に好感されるかに注目。

G20では最近の円高進行について米国側が秩序的との見解を示し、円高リスクは残ったままに

日本株は年初から原油相場や円相場の動きに左右される展開が続いています。こうしたなか日経平均株価は4月8日から15日までの間、終値ベースで約1,026円上昇しました。この背景には、4月14日、15日の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議や17日の主要産油国による生産量維持に向けた会合を前に、為替や原油の方向性を見極めたいとする投機筋などが、いったん日本株を買い戻したことがあると推測されます。

ドル円は4月11日に1ドル=107円63銭水準までドル安・円高が進行しました。G20を控えて政府・日銀による円売り介入は難しいとの見方が、円上昇の1つの理由と考えられます。そのため今回のG20では主要国、特に米国の円高に関する見解が注目されました。結果は日本側が「円相場の偏った動きを懸念している」と表明したのに対し、米国側は「最近は円高が進んだが市場の動きは秩序的」と述べ、円高リスクは残ったままとなりました。

ドーハ会合でも生産量維持の合意に至らず、産油国間の歩み寄りは非常に難しいことを露呈

G20共同声明も、為替に関する部分は前回2月から変更はありませんでした。そのため政府・日銀はやはり介入に動けないとの見方から、市場で再び円買いポジションの積み増しが顕著となった場合、日経平均株価にはかなりの下押し圧力となる可能性があります。ただこの圧力を緩和するカギが原油相場の安定であり、G20後は17日に開催されるカタールの首都ドーハでの会合に注目が集まりました。

報道によれば主要産油国による17日の会合は、イランが参加を見送り、生産量維持に関する最終合意がないまま終了しました。イランは1月の経済制裁解除後、生産量の回復に努めており、生産量維持には強い抵抗があるとみられます。一方、サウジアラビアもイラン抜きでの生産量維持は自国のシェア低下につながりかねないため、安易に合意はできません。したがって今回の会合は、産油国間の歩み寄りは現時点で非常に難しいということを露呈する結果になりました。

次の焦点として企業決算であく抜け感が出るか、政府の経済対策が市場に好感されるかに注目

G20とドーハ会合を終え、まず円相場と原油相場の先行きを整理します。ドル円は4月18日の日本時間朝方、再び107円台をつけるなど、円高方向に振れています(図表1)。4月6日付レポートでお話しした通り、引き続き106円台半ばレベルや節目の105円辺りがドル安・円高の目途と考えます。またWTI原油先物価格は18日の日本時間朝方の時間外取引で、1バレル=37ドル台に下落しており(図表1)、目先は90日移動平均線が位置する34ドル台後半への調整も予想されます。

円高と原油安による株価下落リスクには警戒が必要ですが、それでも直ちに日経平均株価が2月12日の取引時間中につけた安値14,865円77銭を更新するまでには至らず(図表2)、次の焦点は企業決算と政府の経済対策に移っていくと思われます。3月期決算企業の決算発表は5月13日にピークを迎えますが、市場はある程度円高の悪影響を織り込んでいるため、今年度の業績見通しが想定内の悪化であれば、日本株にあく抜け感が出ることも予想されます。また5月中の発表とみられる経済対策は、増税延期の判断や補正予算の規模や内容が市場に好感されるものとなるか否かが、年後半の日本株の方向性に大きな影響を与えると考えます。

160418図表1160418図表2

 

 (2016年4月18日)

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