日本株は出遅れを取り戻せるか

市川レポート(No.234)日本株は出遅れを取り戻せるか

  • 年初から新興国株が総じて上昇、先進国は米国株が健闘も日本株は円高進行で低調な動き。
  • ドル円は円高方向の動きにあるため、日本株はしばらく忍耐を強いられる場面が続くと思われる。
  • 政府・日銀の行動で、海外投資家の信頼を得られるかなどが日本株の出遅れを取り戻すカギに。

年初から新興国株が総じて上昇、先進国は米国株が健闘も日本株は円高進行で低調な動き

世界の主要国株価指数のなかで日本株の出遅れが顕著になっています。2015年12月31日から2016年4月6日までの価格変化率をみると(図表1)、ロシアのRTS指数とブラジルのボベスパ指数が2ケタの上昇率となったほか、アセアン諸国の株価指数も総じて堅調な動きがみられ、新興国株全般に持ち直しの動きが確認できます。一方、先進国については米国株が健闘しているものの、その他はさえない動きで、特に日本株は低調です。

昨年1年間では、新興国株が大きく下げ、日欧の先進国株が上昇していましたので(図表2)、今年はその反動といった側面もあると思われます。ただ商品相場の多くが年初の安値水準を切り上げるなか、新興国経済に対する過度な悲観が後退したことも、新興国株の押し上げにつながったと考えます。そして日本株の場合は、年明け以降の円高進行が相当な重しとなっています。

ドル円は円高方向の動きにあるため、日本株はしばらく忍耐を強いられる場面が続くと思われる

2015年12月31日のニューヨーク外為市場におけるドル円の終値は1ドル=120円22銭水準でした。2016年4月6日の終値は109円79銭水準でしたので、年初から約10円43銭ドル安・円高が進んだことになります。参考までにドル円の昨年1年間における値幅(高値と安値の差)は約10円でした。そのため今年は終値ベースの動きだけで、それもわずか3カ月程度で昨年1年間の値幅に並んだことになります。

年初からの急速な円高進行について、①1~2月は中国の経済減速や原油安に起因する「円全面高」、②3月は米金融当局のハト派姿勢に起因する「ドル全面安」、③4月は原油反落に起因する「円全面高」、という変遷が確認できます。②の場合は株高などリスクオンにつながりやすいのですが、①や③はリスクオフで円急騰となりやすい傾向があります。いずれにせよドル円は円高方向の地合いにあるため、日本株はしばらく円相場をにらみながら忍耐を強いられる場面が続くと思われます。

政府・日銀の行動で、海外投資家の信頼を得られるかなどが日本株の出遅れを取り戻すカギに

さて3月分の米中経済指標をみると、米国では雇用の持続的改善と製造業の持ち直しが、中国では製造業・非製造業PMI揃っての前月比上昇が、それぞれ確認できます。これらは世界経済をけん引する米国や中国に対する行き過ぎた懸念の後退につながり、日本株にとっても悪くない材料です。なお足元で不安定な動きが続いている原油価格ですが、4月17日に増産凍結に向けた主要産油国の会合が予定されています。価格安定に向けた具体的な動きがみられれば、市場のリスクオフが後退することも期待されます。

なお市場では、安倍政権の経済対策や日銀の追加緩和にも依然関心が集まっていますが、一時期のようなアベノミクスに対する強い期待感はみられません。少なくとも経済対策については、企業に新たな成長機会をもたらし、長期的な需要創出に貢献する内容が求められます。政府・日銀の行動によって、日本株を売り越し傾向にある海外投資家の信頼を得られるか、また円高の勢いを止められるか、これらが日本株の出遅れを取り戻すカギを握っていると考えます。

160407図表1160407図表2

 

 (2016年4月7日)

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