日銀政策会合のポイントと今後の展望

市川レポート(No.167)日銀政策会合のポイントと今後の展望

  • 日銀は金融政策の維持を決定も、相場にある程度織り込み済みで大きな動揺はみられず。
  • 展望レポートでは経済成長と物価見通しが下方修正され、物価目標の達成時期も先送り。
  • ただ黒田総裁は従来の政策スタンスを維持し、追加緩和を急ぐ様子はみられなかった。

日銀は金融政策の維持を決定も、相場にある程度織り込み済みで大きな動揺はみられず

 日銀は10月30日の金融政策決定会合で金融政策の維持を決定しました。今回は追加緩和を予想する向きも多かったのですが、①日本株が9月につけた安値から戻り基調にあること、②ドル円相場が比較的安定推移していること、③9月の鉱工業生産や消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)が予想を上回ったことなどを勘案すれば、日本経済が直ちにデフレに逆戻りする恐れは小さく、追加緩和見送りの判断は妥当だったと思われます。

 結果は12時22分に公表されましたが、その直後にドル円は120円90銭付近から120円30銭付近までドル安・円高が進行し、後場の日経平均株価も前場の引け値から58円程度下げて小安く寄り付きました。市場の追加緩和期待は根強かったものの、前日発表の鉱工業生産などを受けてある程度は見送りが織り込まれていたと思われ、実際に金融政策の維持が決定されても相場が大きく動揺することはありませんでした。  

展望レポートでは経済成長と物価見通しが下方修正され、物価目標の達成時期も先送り

 経済・物価情勢の展望(展望レポート)は15時に公表されました。今回は、経済成長率や物価上昇率の見通しが下方修正され、また物価上昇率2%という政策目標の達成時期も先送りされるという事前の観測報道があったため、市場の注目度が高まっていました。実際に公表されたレポートでは観測報道のとおり、経済成長と物価の見通しが下方修正され、物価目標の達成時期も先送りされていました。 

 実質GDP成長率の前年度比伸び率は、2015年度が+1.7%から+1.2%へ、2016年度は+1.5%から+1.4%へ、それぞれ下方修正されました(図表1)。また消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)の前年度比伸び率は、2015年度が+0.7%から+0.1%へ、2016年度が+1.9%から+1.4%へ、比較的大幅に下方修正されました(図表2)。その結果、物価目標の達成時期は「2016年度前半頃」から「2016年度後半頃」に先送りされました。 

ただ黒田総裁は従来の政策スタンスを維持し、追加緩和を急ぐ様子はみられなかった

 今回、見通しの前提となる原油の想定価格推移を1バレルあたり10ドル程度引き下げられており、2015年度におけるエネルギー価格のマイナス寄与度の幅は前回から-0.1%~-0.2%ポイント程度拡大しました。ただ2015年度の物価見通しの下方修正幅はそれを超える-0.6%ポイントとなっています。これに対し日銀の黒田総裁は15:30から行った記者会見で、2015年度の経済成長見通しが下方修正されたことによる影響もあると説明しました。 

 また黒田総裁は、物価目標の達成時期が半年ほど後ずれしたのはエネルギー価格の下振れによるものであり、物価の基調は着実に改善しているため先行き物価上昇率2%達成は実現できるとみていると述べました。記者会見をみる限り、従来の政策スタンスを維持する黒田総裁に追加緩和を急ぐ様子はありませんでした。ただこの先、国内景気の足踏みと物価の伸び悩みが長引いた場合、早ければ来年1月にも政府の景気対策と併せる格好で追加緩和に踏み切る可能性は残っていると思われます。

151030 図表1151030 図表2

 (2015年10月30日)

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