ドル円相場の見通し
市川レポート(No.138) ドル円相場の見通し
- ドル円は6月につけた高値125円86銭水準から8月に116円18銭水準まで下落。
- 目先の戻りの目安は61.8%戻しの122円16銭水準、90日線が位置する122円台後半。
- ただ上昇ペースは緩やかで、年末までの展望でも上値目途は126円程度になろう。
ドル円は6月につけた高値125円86銭水準から8月に116円18銭水準まで下落
6月から足元までのドル円相場の動きを振り返ります。ドル円は6月5日に一時1ドル=125円86銭水準の年初来高値をつけた後、6月10日の黒田日銀総裁発言(実質実効為替レートがここからさらに円安に振れることはない)や、ギリシャの金融支援を巡る混乱、そして中国株の大幅調整を受け、7月8日には1ドル=120円41銭水準まで下落しました。その後はギリシャ問題が解決に向け進展し、中国株もいったん落ち着きをみせたことから、ドル円は次第に買い戻されました。
8月11日に中国が事実上の元切り下げを発表すると、直後はドル全面高の展開となり、ドル円は翌12日に1ドル=125円28銭水準までドル高・円安が進行しました。しかしながら中国株が再び下げ足を速め、中国経済の先行きに対する懸念が強まると、世界の金融市場は一気にリスクオフ(回避)へ傾きました。為替市場では円買いが膨らみ、ドル円は8月24日に1ドル=116円18銭水準の安値をつけました。
目先の戻りの目安は61.8%戻しの122円16銭水準、90日線が位置する122円台後半
8月24日のローソク足チャートをみると、下げ相場のなかで2円20銭ほどの長い下ひげが出現していますが(図表1)、これは一般的に相場反転の可能性を示唆するものと解釈されます。実際にその後ドル円は上昇に転じ、8月28日まで4営業日続伸となりました。相場が反転した場合、戻りの目安をみる上でフィボナッチ・リトレースメントというテクニカル分析がよく用いられます。これは高値から安値までの下げ幅から23.6%、38.2%、50.0%、61.8%、76.4%戻った水準を目安と考えるものです。
6月5日から8月24日までの下げの50%戻しは121円02銭水準ですが、すでに8月27日に到達しました。次の目安は61.8%戻しの122円16銭水準で、ここを回復すると8月24日からの下げが完全に埋まることになります。なおドル円は今回の下げで年初からサポートライン(支持線)として意識されてきた90日移動平均線を大きく割り込んだため、今後は同線がレジスタンスライン(抵抗線)として作用する可能性があります。直近では122円台後半に位置していますので(図表2)、短期的にはまずドル円がこの水準までの戻りを達成できるかが注目されます。
ただ上昇ペースは緩やかで、年末までの展望でも上値目途は126円程度になろう
日米のマクロ経済に目を向けると、米国では7月の耐久財受注が予想上回り、4-6月期の実質GDP改定値が速報値から上方修正されるなど、良好な経済指標の発表が続いています。9月利上げの見通しは今回の相場の混乱で後退していますが、年内利上げの可能性は残っていると思われます。一方、日本では4-6月期の実質GDP1次速報値の伸びが前期比年率でマイナスになり、7月の消費者物価指数(生鮮品を除く)は前年同月比で横ばいでした。ただ7-9月期はプラス成長に戻る見通しで、また直ちにデフレマインドに逆戻りするような状況にはないため、日銀は追加緩和を急がないと考えます。
日米金融政策の方向性の違いはドル高・円安要因であることに変わりはありませんが、米利上げ時期が先送りされるとの見方が優勢となるなかでは米長期金利の大幅な上昇は見込み難く、また日銀の追加緩和の公算も小さいことから一段の円安進行も限定されると考えます。そのためドル円の上昇はかなり緩やかなものにとどまり、年末までの期間を展望しても上値の目途は1ドル=126円程度になると思われます。
(2015年8月31日)
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