日本株を取り巻く投資環境の変化(その2)

市川レポート(No.92) 日本株を取り巻く投資環境の変化(その2)

  • 昨年以降、日本の「稼ぐ力」を強化するため、様々な施策が打ち出された。
  • いずれも日本再興戦略およびその改訂で掲げられた項目を迅速に具体化したもの。
  • 最終投資家にとって好ましい環境が整い、一連の施策は高く評価して良かろう。

 

昨年以降、日本の「稼ぐ力」を強化するため、様々な施策が打ち出された

 前回のレポートでは、過去の日本株投資がリスク・リターンでみた効率性の点で米国株投資に劣っていたため、これが日本株を慎重にみる投資家の心理に長らく影響していた可能性があるとのお話しをしました。しかしながら現在、アベノミクスの第3の矢である成長戦略の効果が徐々に表れ、この状況が大きく変化する兆しがみられるようになりました。

 昨年以降、政府が主導役となり、日本の「稼ぐ力」を強化するため、様々な施策が打ち出されました。主なものとして①JPX日経インデックス400の算出開始(2014年1月)、②「日本版スチュワードシップ・コード」の導入(2014年2月)、③経済産業省による「伊藤レポート」の発表(2014年8月)、④社外取締役導入促進にかかわる会社法の改正(2015年5月)、⑤「コーポレート・ガバナンス・コード」の導入(2015年6月)、が挙げられます(図表1)。 

いずれも日本再興戦略およびその改訂で掲げられた項目を迅速に具体化したもの

 ①、②、④は「日本再興戦略」(2013年6月)に掲げられた項目を具体化したものです。このうち②の「日本版スチュワードシップ・コード」は、機関投資家が対話を通じて企業の中長期的な成長を促すなど受託者責任を果たすための行動指針で、金融庁の有識者会議で策定されました。⑤の「コーポレート・ガバナンス・コード」は「『日本再興戦略』改訂2014」(2014年6月)に基づくもので、上場企業を対象にした企業統治の指針です。6月から東証1、2部に上場する企業に適用されています。そして③の伊藤レポートは、企業価値を持続的に向上するため、企業と投資家の望ましい関係構築について提言を行ったものです。

最終投資家にとって好ましい環境が整い、一連の施策は高く評価して良かろう

 これらの施策はどのような効果が期待できるのか、最終投資家(顧客・受益者)の目線で考えてみたいと思います。まず「スチュワードシップ・コード」を受け入れた機関投資家は、企業と対話を通じて成長を促し、顧客・受益者の「中長期的な投資リターンの拡大」を図ります。一方、「コーポレート・ガバナンス・コード」を適用する企業側も、「持続的な成長と中長期的な企業価値の向上」のための取り組みを積極的に行います。法改正では社外取締役の導入が促進され、伊藤レポートでは企業は8%以上の自己資本利益率(ROE)達成をコミットすべきで(図表2)、「長期的な投資からリターンを得られる仕組み」を作る必要があると提言しています。これらによる具体的な成果は、収益性や経営面で評価の高い銘柄で構成されるJPX日経インデックス400のパフォーマンスで確認することができます。

 すなわち、日本政府が「稼ぐ力」の強化を標榜するなかで、企業は「持続的な成長と中長期的な企業価値の向上」に努め、機関投資家が対話を通じてそれを促し、「中長期的な投資リターンの拡大」を図るという仕組みが出来上がったということになります。株式市場を取り巻く制度改革が一気に進んだことで、株式の最終投資家である顧客や受益者にとっては好ましい環境が整いました。投資効率の改善につながる見通しも強まり、一連の施策は高く評価して良いと思います。それでは実際の投資にあたって、この先どのような点に注目すべきか、次回のレポートで考えてみます。

150615 図表1150615 図表2

 (2015年6月15日)

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