東証の新3市場開始から1週間でみえてきたこと

東証の新3市場開始から1週間でみえてきたこと

  • 新3市場が始動してから7営業日が経過し、市場参加者から様々な意見が聞かれるようになった。
  • 新3市場の動きを示す指数も新たに算出開始、ただ終値のみの公表で分析にはデータが未整備。
  • 新市場区分や新市場指数には課題が多く、今回の市場再編は解決に向けた第一歩に過ぎない。

新3市場が始動してから7営業日が経過し、市場参加者から様々な意見が聞かれるようになった

先週は4月4日に、東京証券取引所(以下、東証)の市場が再編され、新たに「プライム」、「スタンダード」、「グロース」の3市場が始動しました。昨日までに7営業日が経過しましたが、新たな3市場に対する様々な意見が市場参加者から聞かれるようになりました。そこで今回のレポートでは、これら市場参加者の声も踏まえ、改めて新市場の課題について考えます。

新たな3市場は、それぞれのコンセプト(図表1)に応じ、流動性やコーポレート・ガバナンスなどにかかわる定量的・定性的な上場基準が設けられ、旧市場より市場区分が分かりやすくなりました。ただ、上場維持基準の未達企業には経過措置が講じられたほか、プライム市場の新規上場基準と上場維持基準の流通時価総額は100億円以上と比較的小さく、日本株の魅力をアピールするにはまだ力不足との声も多く聞かれます。

新3市場の動きを示す指数も新たに算出開始、ただ終値のみの公表で分析にはデータが未整備

また、新市場の誕生に伴い「東証プライム市場指数」、「東証スタンダード市場指数」、「東証グロース市場指数」の3指数の算出が始まりました。これらは新市場に上場する企業の値動きを示す指数であり、基準日は2022年4月1日、基準値は1,000ポイントです。しかしながら、これらの3指数は、リアルタイムで算出されず、1日に1回、15時30分以降に終値が公表されるだけとなっています。

つまり、新たな3市場については、取引時間内の動きを把握することができず、また、通常の指数で算出されるような、始値、高値、安値、終値といった4本値も3指数にはありません。さらに、3指数とも過去に遡って算出されていないため、長期データが存在しません。したがって、各市場の動きを分析するためのデータが十分に整備されていない、ということになります。

新市場区分や新市場指数には課題が多く、今回の市場再編は解決に向けた第一歩に過ぎない

そのため、日本株のリアルタイムの動きをみるには、引き続き、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)、東証マザーズ指数を参照していく必要があります。参考までに、新たな3指数を含む日本株の主要指数について、2022年4月1日を基準に4月12日までの騰落率を示したものが図表2です。これをみると、東証プライム市場指数はTOPIXと同じ-4.15%で、東証グロース市場指数は東証マザーズ指数に近い数字になっています。

以上より、新市場区分については、早期の経過措置の撤廃や、プライム市場における上場企業数の絞り込みの検討などが課題であり、新市場指数については、リアルタイムの算出、4本値の公表、長期データの整備などが課題と思われます。海外から広く投資マネーを呼び込み、日本株市場を活性化させるには、まだ課題が多く、今回の市場再編は、その解決に向けた第一歩に過ぎないと考えています。

 

 

(2022年4月13日)

 

市川レポート バックナンバーはこちら

http://www.smam-jp.com/market/ichikawa/index.html

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
主要国のマクロ経済や金融市場に関する注目度の高い材料をとりあげて、様々な観点から分析を試みます。
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものであり、投資勧誘を目的として作成されたもの又は金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、当社は責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料は当社が信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。本資料を投資の目的に使用したり、承認なく複製又は第三者への開示等を行うことを厳に禁じます。
●当資料の内容は、当社が行う投資信託および投資顧問契約における運用指図、投資判断とは異なることがありますので、ご了解下さい。

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第399号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会