原油相場を取り巻く3つの材料を整理する

原油相場を取り巻く3つの材料を整理する

  • ウクライナ情勢を巡り関係各国は協議継続、ロシアの侵攻など懸念が残る間は原油高の地合いに。
  • 米国とイランは核合意再生の協議中、経済制裁解除ならイラン産原油の供給増で原油安要因。
  • OPECプラスの追加増産は実現困難、WTI原油先物価格はテクニカル分析上103ドルが目安に。

ウクライナ情勢を巡り関係各国は協議継続、ロシアの侵攻など懸念が残る間は原油高の地合いに

WTI原油先物価格は2月14日、一時1バレル=95ドル82セントをつけ、約7年5カ月ぶりの高値水準に達しました。そこで、今回のレポートでは、原油相場を取り巻く3つの材料を整理し、原油高の持続性について考えます。まず、1つめは「ウクライナ情勢」です。仮にロシアがウクライナに侵攻し、欧米諸国から大規模な経済制裁が課された場合、ロシア産の原油などに供給不安が高まる恐れがあります。

なお、ロシアは2月15日、ウクライナ付近のロシア軍の一部を撤収すると発表し、WTI原油先物価格は同日、大きく下落しました(図表1)。ただ、この発表でウクライナ情勢が改善に向かうとの判断は難しいように思われます。欧米諸国とロシアは、双方が納得いく着地点を見つけるまで、軍事行動をちらつかせつつ協議を継続する可能性が高く、ロシアのウクライナ侵攻などへの懸念が残る間は、原油高が進みやすい地合いが予想されます。

米国とイランは核合意再生の協議中、経済制裁解除ならイラン産原油の供給増で原油安要因

次に、2つめは「イラン核合意」です。これは、2015年に米英独仏中ロの6カ国とイランが合意した「包括的共同作業計画」のことで、イランがウラン濃縮活動など核開発計画の制限を受け入れる代わりに、米英などがイランへの経済制裁を解除する内容です。ただ、トランプ前米大統領は2018年、この合意から一方的に離脱を表明し、2019年には、日本を含む8カ国・地域にイラン産原油の輸入を認める特例措置の打ち切りを発表しました。

しかしながら、バイデン米大統領は2021年4月、核合意の再生をめざし、欧州連合(EU)などの仲介によるイランとの間接協議を開始しました。経済制裁が解除されれば、イランは原油を増産、輸出拡大が可能となるため、原油価格の押し下げ要因になると思われます(図表2)。ただ、米国側とイラン側との交渉が折り合わない部分もあり、しばらくは協議の進展を見守る必要があります。

OPECプラスの追加増産は実現困難、WTI原油先物価格はテクニカル分析上103ドルが目安に

そして、3つめは石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国でつくる「OPECプラス」の「増産ペース」です。OPECプラスは現在、毎月日量40万バレルの増産方針を維持していますが、バイデン米政権は原油高を嫌い大幅な追加増産を訴えています。追加増産は原油安要因となりますが、OPECプラスは全会一致が原則のため、ロシアがウクライナ情勢で米国と対立している現状、追加増産の実現は困難と思われます。

以上を踏まえると、原油相場にはまだしばらく上値を試す余地があるように見受けられます。なお、WTI原油先物価格について、テクニカル分析の1つであるフィボナッチポイントを計算すると、2008年7月高値(147ドル27セント)から2020年4月安値(-40ドル32セント)までの下げ幅の76.4%戻しが103ドルとなるため、この水準を1つの高値メドと考えることができます。

 

(2022年2月16日)

 

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