日本株はリターンリバーサルの動きが顕著に

日本株はリターンリバーサルの動きが顕著に

  • 日本株は昨年コロナの影響で業種の明暗が分かれたが今年はリターンリバーサルの動きが顕著に。
  • 年初から、株価の上昇が目立っているのは、鉄鋼、鉄道、百貨店、銀行などの「コロナ逆風銘柄」。
  • 背景は日本経済の早期正常化期待、ただコロナ逆風銘柄の株高持続性は、先行きの業績次第。

日本株は昨年コロナの影響で業種の明暗が分かれたが今年はリターンリバーサルの動きが顕著に

「リターンリバーサル」とは、株価が上昇している銘柄を売り、下落している銘柄を買う、いわゆる「逆張り」の運用戦略のことをいいます。この戦略は、株価が大きく上昇している銘柄は、やがてその反動で下落し、逆に売り込まれていた銘柄は、やがて反発するという経験則に基づいたものです。日本株は年初から、このリターンリバーサルの動きが顕著にみられます。

昨年は、コロナの感染拡大が株価の明暗を分けました。製造業では、PC需要や5G向け部品需要の増加が追い風となった半導体製造装置や電子部品、巣ごもり需要として注目されたゲーム関連のほか、医療機器などの業種に、株価が良好なパフォーマンスを示す銘柄が目立ちました。また、非製造業では、宅配、ネット通販、ネット関連サービスなどの業種が総じて好調でした。

年初から、株価の上昇が目立っているのは、鉄鋼、鉄道、百貨店、銀行などの「コロナ逆風銘柄」

一方、コロナの感染拡大が業績の向かい風となったのは、製造業では、鉄鋼やゴム製品、石油・石炭製品などの素材全般で、景気悪化により各素材の需要が減少し、株価の低迷を余儀なくされた銘柄が多くみられました。また、非製造業では、外出や移動の制限が直接的な業績の重しとなった鉄道や航空、百貨店のほか、建設業や不動産業も、株価は厳しいパフォーマンスとなりました。そして、景気敏感業種の金融は全般に株価が低調でした。

しかしながら、これら「コロナ逆風銘柄」は、今年に入り、上昇に転じるものも出てきています。図表1は、日経平均構成銘柄のうち、昨年は株価が下落したものの、今年は上昇している主な銘柄などをまとめたものです。これをみると、ゴム製品や石油・石炭製品など、素材のなかで、株価が持ち直している銘柄が確認できます。また、鉄道や航空、百貨店などのほか、銀行、生命保険にも、株価が反発している銘柄があることが分かります。

背景は日本経済の早期正常化期待、ただコロナ逆風銘柄の株高持続性は、先行きの業績次第

このようなリターンリバーサルが発生したのは、米国の追加経済対策の規模が市場の想定よりも大きくなる可能性が高まったことや、日本国内で今月にもワクチン接種が始まる見通しとなったことから、米国景気の力強い回復と国内のワクチン普及で、日本経済は早期に正常化に向かうとの期待が強まったためと考えられ、コロナ逆風銘柄の業績回復を先取りする動きと推測されます。

したがって、コロナ逆風銘柄の株価上昇の持続性については、実際に日本経済が正常化に向かった際、その先の業績見通しがカギを握ると思われます。業績の継続的な回復が見通せない銘柄は株高基調が持続せず、それが見通せる銘柄は持続するということになります。そのため、コロナ逆風銘柄の株価が、全体で上昇を続けることも、逆に失速することもあり、また、そのなかで動きが分かれることも十分考えられます。

(2021年2月8日)

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