IMF世界経済見通しメモ(2021年4月)
国際通貨基金(IMF)は4月6日、最新の経済見通しを発表しました。2020年、2021年の世界の成長率見通しを前回の予測(1月)より上方修正しました(世界および主要国の見通しは図表1、2を参照)。未曽有の財政出動や金融緩和の継続に加え、一部諸国、特に米国で講じられている追加の財政支援(3月に成立した1.9兆ドル規模の経済対策等)が経済見通しをさらに上向かせた模様です。
主なポイントは以下のとおりです。
▣ 2021年、2022年の世界経済の成長率を上方修正
- 2021年と2022年の世界経済の成長率予測は、それぞれ0%、4.4%と、今年1月の予測と比べて2021年は0.5%ポイント、2022年は0.2%ポイント改善
- 米国など、一部の経済大国における追加の財政支援や、年後半にワクチン接種効果による景気回復が期待されることを反映
- 世界の経済成長率は、中期的には3%まで減速
▣ 回復は異なる速度で進行
- 米国では今年前半に国内総生産(GDP)がコロナ禍前の水準を上回ることになると見込まれる
- 日本は今年後半にはコロナ禍前の水準を上回る見込み
- 一方、欧州など他の多くの先進国ではコロナ禍前の水準までGDPが回復するのは2022年以降
- 中国のGDPは2020年中にすでにコロナ禍前の水準に戻っている
- 一方、他の多くの新興市場国や発展途上国では2023年になってもしばらくコロナ禍前の水準を回復できない見込み
- また、新型コロナウイルスによる景気後退が残す傷跡は、2008 年の世界金融危機に比べれば小さなものとなる公算が大きいものの、新興市場国や低所得途上国はより大きな打撃を受けており、中期的にも多大な損失を被ると見込まれる
▣ 高い不確実性、長期金利上昇もリスク
- これらの予測には高い不確実性が伴う
- 未だにウイルスとワクチンのスピード競争にかかっている部分が多い
- ワクチン接種がさらに広く普及すれば予測は上振れしうる一方、ワクチンが効かないウイルスの新たな変異株が大幅な下方修正につながることもありうる
- 直近の数か月間に見られている長期金利の急上昇も不確実要因
- 秩序ある上昇でより力強い成長の予想を反映したものであれば、他国に困難をもたらすものではないが、先進国の金融政策スタンスが急激にタイト化するとの感覚を反映したものであるならば、新興市場国や発展途上国に負の波及効果が生じる可能性
- 政策当局者は、引き続き国際流動性に十分アクセスできるようにすべき
- 主要中央銀行は将来の措置について明確なガイダンスを提供し、2013年に起こったテーパータントラム※のような事象を回避すべく準備の時間も十分与えるべき
※2013年5月に、当時のバーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長が議会証言で、今後、幾度かの会合を経て、債券の購入ペースを徐々に減速することで量的緩和を縮小する可能性を示唆したことを受け、米金利の急騰や新興国の通貨や株式などからの資金流出などをまねき、金融市場が大きく混乱しました。「バーナンキショック」もしくは、テーパリングを示唆して、市場が癇癪に陥ったことから「テーパータントラム」と呼ばれます。
図表、スケジュール入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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