ミャンマーの光:軍事クーデターで消えるのか?
5年前に見た希望の光
ミャンマーは、金色のパゴダ(仏塔)が随所に輝く、東南アジアの仏教国です。5年ほど前に筆者がそこを訪れたとき、その未来にも、光が灯っているように見えました。政治、経済の両面においてです。
2011年、ミャンマーは、長年の軍事独裁を脱し、民主政へ移行しました。これは、米国などによる経済制裁の緩和へつながりました。2016年春には、アウンサンスーチー氏が、国家顧問(政権の実質的リーダー)に就きました。それらを受け民主化と経済発展が軌道に乗る、という希望に満ちていたのです。
クーデターで暗い雲が
しかし今、暗い雲がたれこめています。今月上旬、国軍が、アウンサンスーチー氏や多数の与党幹部を拘束し(現在同氏は自宅軟禁)、軍を率いるミンアウンフライン総司令官らが、実権を掌握したのです。
国軍の主張は、昨年11月の総選挙で「不正選挙」が行われたので、新議会は正統性を欠く、というものです(米国のトランプ前大統領の主張を真似たのか否かは不明)。しかし、不正選挙が行われた証拠は、特段ありません。よって、軍による不当なクーデター(政権転覆)が行われた、と言わざるを得ません。
国軍の動機は何なのか?
その総選挙では、アウンサンスーチー氏の率いる与党が、大差で勝利しました。一方、国軍の後ろ盾を受けた勢力は、大敗を喫しました。そのため軍の影響力が弱まるのを、総司令官らが恐れた模様です。
ミャンマーは、平均所得で見ると、アジア最貧国の一つです。ただ、現地へ行くと驚かされるのですが、格差が極めて大きく、富裕層も存在します。そして、国営複合企業の支配などを通じ、今も既得権益を握っているのが、国軍です。富裕層である軍幹部は、その権益を失うのを恐れているのでしょう。
民主化後の厳しい歩み
もっとも、ミャンマーの雲行きは、今回のクーデター前から怪しくなっていました。民主化後、経済が停滞気味だからです(図表1)。コロナウイルスによる犠牲も、近隣のベトナムやタイに比べ甚大です。
さらに、民族問題も、ミャンマーに影を落としています。特に2017年には、イスラム系の少数民族・ロヒンギャを国軍が迫害し、国際社会から非難を浴びました。この点で、アウンサンスーチー氏は、国軍を擁護しています(動機は複雑ですが)。その結果、欧米では、同氏の評判が失墜してしまいました。
日系企業の微妙な立場
2011年の民主化後、ミャンマーの成長期待から、日系企業の進出が急増しました(図表2)。ただし、日系企業は国軍を必ずしも嫌っておらず、筆者の往訪時、「軍幹部は勉強熱心」という声も聞かれました。
そのため、軍事政権がビジネスの障害になるとは限りません。とはいえ、人々は、仏教的な諦めには達していません。よって、民主化への熱意やアウンサンスーチー氏への敬慕から、反軍政デモが激化し政治混乱が続くことも、十分あり得ます。女神同然の存在である同氏の光は、まだ消えていないのです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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