来週の金融市場見通し(2025年12月8日~2025年12月12日)
■来週の見通し
日銀の植田総裁は金融経済懇談会で、18~19日の金融政策決定会合で「利上げの是非について適切に判断したい」と語りました。市場では12月利上げに意欲を示したとの受け止めが広がりました。高市政権も日銀が利上げするのを容認する構えと伝わったことも、利上げ観測を強めました。他方、米連邦準備理事会(FRB)は来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利下げを決定するとみられます。内外の経済指標、パウエルFRB議長の発言なども確認しながら、翌週の日銀会合を待つことになりそうです。
◆株価 :FOMCに注目
今週の日本株は、一進一退の動きとなりました。植田総裁が、12月の金融政策決定会合での利上げを示唆したことが嫌気され、週初は売りが優勢となりました。他方、12月のFOMCで利下げが決まるとの期待が支えとなり買いが優勢となる場面もありました。
来週は、FOMCが注目されます。FOMCでは、0.25%の利下げが決まる見込みですが、会合後のパウエル議長の会見で来年の利下げに慎重な姿勢が示されると、株価を下押しする恐れがあります。また、12日(日本時間早朝)に予定されている米半導体大手ブロードコムの決算発表も相場を動かす可能性があります。決算が市場予想よりも好調な場合、国内でも半導体関連株が物色され、12日の株価は堅調な動きとなる可能性があります。
◆長期金利 :一段の上昇は限定的か
今週の長期金利は大きく上昇しました。10年国債、30年国債入札は順調だったものの、植田日銀総裁による事実上の「利上げ宣言」に加え、高市政権が利上げ容認に傾いていると伝わったこと、また国債増発への警戒から、長期金利は1.95%と2007年7月以来の水準まで上昇しました。
来週は、翌週に日銀会合を控える中、一進一退の動きを予想します。FOMCでは追加利下げが見込まれますが、政策金利見通しやパウエル議長の発言でさらなる利下げ観測が強まると、米金利が低下し、国内の長期金利の上昇が抑制されることも想定されます。軟調地合いが続いていますが、超長期債増発への過度な警戒がやや後退する中、一段の金利上昇局面では押し目買いも入りそうです。FOMC通過後は日銀会合待ちとなりそうです。
◆Jリート :下値目途を探る
今週のJリート市場は、下落しました。植田総裁が金融経済懇談会で12月の日銀会合における追加利上げの可能性を示唆したことを受け、長期金利が18年ぶりに1.9%台まで上昇したことが売り圧力となりました。今週末の分配金利回りは4.621%(東証上場REITの予想分配金利回り、QUICK算出)となりました。
来週は、日米の金融政策や長期金利の動向をにらみつつ、下値の目途を模索する展開を想定しています。2025年度の補正予算案をめぐる財政の膨張圧力の高まりと日銀の12月会合での追加利上げ観測が重なり、長期金利が高止まりすると、Jリート市場を下押ししそうです。一方、値下がりした局面では下値を拾う買いや分配金利回りに着目した買いも期待されることから下値も限定的になると見込んでいます。
◆為替:来年以降の米利下げ期待に左右
今週のドル円相場はドル安・円高が進行しました。植田日銀総裁が講演で、12月会合での利上げに前向きな姿勢を示したことで、市場の同会合での利上げ期待が強まり、円を買い戻す動きが広がりました。さらに、ADP雇用統計などの米国の経済指標が弱含んだことで、週末にかけては、1ドル=154円台までドル安・円高が進行しました。
来週のドル円相場は、9、10日に開催されるFOMCに注目が集まります。同会合での利下げはほぼ確実視されていますが、会合後のパウエルFRB議長の記者会見や参加者の政策金利見通しが、来年以降のFRBの利下げ期待を左右するとみられます。ただし、日本の財政悪化懸念がくすぶるなかで、円高の進行余地は限られるとみられます。
◆米国株 :FOMCに注目
今週の米国株は、底堅い動きとなりました。トランプ大統領が次期FRB議長について、候補者を一人に絞ったと語り、利下げに積極的な考えを持つとみられるハセット氏が指名されるとの見方が一段と強まったことが相場を支えました。また、米労働市場の減速を示唆する経済指標が相次いだことも利下げ期待を高め、株価の押し上げ要因となりました。
来週は、FOMCが注目されます。FOMCでは、0.25%の利下げが決まる見込みですが、会合後のパウエル議長の会見で来年の利下げに慎重な姿勢が示されると、株価を下押しする恐れがあります。半導体株は、ブロードコムの決算発表を受けて、12日は荒い値動きとなる可能性があります。決算が市場予想を上回る内容になると、買いが優勢となることが想定されます。
■来週の注目点
法人企業景気予測調査(25/10-12月期)12月11日(木)発表
7-9月期の法人企業景気予測調査では、大企業・全産業の景況判断指数(BSI、季節調整値)は+2.4%ポイントと、好不調の基準となるゼロを上回る推移が続きました。製造業では、米国の関税政策を巡る不透明感から、景況感が悪化した一方、インバウンド需要の回復や価格転嫁の進展を受け、非製造業の景況感が大きく改善しました。
10-12月期の景況判断指数はプラス圏での推移が続く見込みです。米国の関税政策による業績悪化懸念の後退に加え、世界的な半導体需要の回復を背景に製造業は改善することが予想されます。非製造業では、日中関係の悪化に起因するインバウンド需要の減少が懸念されますが、底堅い個人消費が景況感の支えとなりそうです。
中国生産者物価、消費者物価(11月)12月10日(水)発表
10月の中国の消費者物価指数(CPI、総合)は前年比0.2%上昇と、3か月ぶりのプラスに転じました。連休の旅行需要の回復により、関連品目の価格が上昇しましたが、内需全般が勢いを欠くなかでそれ以外の物価の伸びは低迷が続きました。
11月のCPIは前年から横ばい圏での推移が予想されます。不動産市況の低迷や若年層を中心とする雇用環境の悪化が続くなかで、家計の節約志向は高まっており、安定的な物価上昇が定着するには時間を要するとみられます。
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