来週の金融市場見通し(2023年8月14日~2023年8月18日)

■来週の見通し

格付大手のムーディーズによる米地方銀行10行の格下げや、イタリア政府による銀行への追加課税の方針が伝わり、米欧の金融不安が広がりました。ただ、ムーディーズは収益性の低下が理由であり、資本不足などに陥っている懸念はないとしています。また、イタリア政府が株価の急落を受け、新税の一部を撤回したことから、金融不安はやや後退しています。決算発表も峠を越し、7月の米消費者物価指数(CPI)を受けた米金融市場の反応や、内外の経済指標を確認しながら、方向感を探ることになりそうです。

◆株価 :上値の重い展開か

日本株は、上値の重い展開が見込まれます。今週発表された中国の貿易統計では、輸出入がともに前年から大きく減少しており、中国経済の減速が株価の重しとなりそうです。また、国内金利の上昇が株価を下押しする場面もありそうです。ただ、国内景気の拡大などを期待した海外投資家の日本株への投資意欲は根強く、株価を下支えしそうです。そうした中、10日に発表される7月の米CPIが注目されます。

◆長期金利 :日米のCPIにらみ

30年国債が順調な結果となり、旺盛な需要が確認できたことに加え、米欧の銀行経営をめぐる懸念が再燃したことを背景に米長期金利が低下したことを受け、国内の長期金利は0.6%を割り込みました。10日発表の米CPIで、米利上げが継続するとの観測が強まると、米金利とともに国内金利にも上昇圧力がかかる可能性があります。7月の全国・消費者物価指数(CPI)に加え、5年国債、20年国債入札も確認したいところです。

◆為替米CPI次第か

ドル円は、米CPIの結果次第では変動性が高まる可能性があります。基本的には日本の6月の実質賃金の伸びが前年比で15か月連続でマイナスとなるなど、日銀が緩和政策を継続する必要性が高まったとみられることなどから、円は売られやすい地合いにあります。他方、米国の利上げは7月で終了の可能性があり、米CPIが市場予想の範囲内となれば、ドルの上値は限定的となり、ドル円はレンジ内で方向感を欠く展開となりそうです。

◆Jリート :もみ合いながら上値を探る

東証REIT指数は、日米の金利上昇基調を背景に足元で住宅系リートを中心に下げが続いていましたが、日米の長期金利の上昇に一服感が出てきたことや値ごろ感などから、買い戻しが優勢になりました。7月の東京都心のオフィス空室率が2か月ぶりに低下したことは下支え材料です。中国政府が10日に、日本行き団体旅行を同日付で解禁すると伝わったことも、投資家心理を上向かせそうです。もみ合いの中、上値を探る動きが続きそうです。

来週の注目点

GDP統計(23/4-6月期) 8月15日(火)午前8時50分発表

実質国内総生産(GDP)は、1-3月期に前期比年率2.7%増と、2四半期連続でプラス成長になりました。設備投資や個人消費が前期比増加し、景気回復傾向が鮮明になりました。

4-6月期の実質GDPは、3四半期連続でプラス成長になることが見込まれます。自動車生産の正常化と堅調な外需により、輸出の伸びが高まった模様です。ただ、物価高が個人消費の重しとなりそうなほか、世界経済の不透明感を背景に企業が設備投資に慎重になることが見込まれ、当面緩やかなGDP成長にとどまると予想されます。

米小売売上高(7月) 8月15日(火)午後9時30分発表

6月の米小売売上高は、前月比0.2%増となり、増加幅は前月から縮小したものの、3か月連続で増加しました。インフレが高止まりし、借入れコスト増が重しとなる中でも、家計の消費需要が底堅いことが示唆されました。

米国では、堅調な労働市場と賃金動向を背景に、家計支出は底堅い推移が続きそうです。しかし、米利上げは最終局面にあるとの観測があるものの、信用収縮の懸念もあり、今後の家計支出の動向は不透明感が残ります。7月の米小売売上高は前月比0.4%増程度を想定しています。

 

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