来週の金融市場見通し(2023年8月7日~2023年8月11日)

■来週の見通し

米経済がソフトランディング(軟着陸)するとの期待が広がっていましたが、格付大手のフィッチが、米国の長期外貨建て発行体格付けを最上級のトリプルAからダブルAプラスに引き下げたことを受け、投資家心理がやや悪化しています。まだ高格付けであり、またドルは世界の基軸通貨でもあることから、今回の格下げは心配いらないとの見方もあり、市場の動揺は徐々に収まっていくとみられます。内外の経済指標に加え、米雇用統計を受けた米国市場の反応なども確認しながら、方向感を探ることになりそうです。

◆株価 :底堅い展開か

日本株は、底堅い展開が見込まれます。今週の株式市場は、米国債の格下げをきっかけに世界同時株安となりましたが、これまで発表された国内企業の4-6月期決算は堅調であることから、市場が落ち着きを取り戻せば、業績を期待した買いが株価を下支えしそうです。ただ、国内金利の上昇が継続すると株価を下押しする場面もありそうです。そうした中、4日に発表される米国の雇用統計や来週に発表される米国の物価指標が注目されます。

◆長期金利 :居所を探る

長期金利は、日銀が事実上の許容上限を1%に引き上げたことから、一時0.655%と2014年1月以来、9年7か月ぶりの水準に上昇しました。米国債の格下げや8~10月の米国債の新規発行額が増額されたことなどを受けて米長期金利が上昇したことも、国内の長期金利を押し上げました。日銀が臨時の国債買入れオペ(公開市場操作)を実施するなど、急激な金利上昇を抑える姿勢を示す中、しばらくは居所を探る動きが続きそうです。

◆為替変動性高い

ドル円は、レンジ内で変動性の高い展開が続きそうです。日銀は長短金利操作の運用柔軟化を決定したものの、臨時の国債購入オペを実施し、長期金利の上昇を抑制しています。日銀のオペは円売り要因となる一方、米国債の格下げや増発懸念から米国債や米株市場が不安定な動きとなっており、リスクセンチメントが悪化していることから、安全通貨とされる円に買いが入りやすい地合いとなっています。当面は、両者の綱引きが続きそうです。

◆Jリート :戻りを探る

Jリート市場は、日銀が長短金利操作の運用を柔軟化し、長期金利が0.5%を超えることを容認して以降、金利上昇への警戒感などから、売りに押される動きが続きました。もっとも、日銀は急激な金利上昇については抑制する姿勢を示しており、一段の金利上昇は限定的とみられます。市場は日銀の政策修正による金利上昇をある程度織り込んできていることから、債券市場が落ち着いてくれば戻りを探る動きも出てきそうです。

来週の注目点

景気ウォッチャー調査(7月) 8月8日(火)午後2時発表

景気ウォッチャー調査の現状判断指数(DI)は、6月に前月差1.4ポイント低下の53.6と、5か月連続で50を上回りました。物価高などを要因に家計動向関連、企業動向関連ともに低下しました。

7月の現状判断指数は、小幅な低下が見込まれます。人流回復による経済活動の活発化は企業動向関連の追い風になると見込まれる一方、原材料費などの上昇や人手不足が景況感の重しとなりそうです。また家計動向関連は、公共料金や食品の値上がりなどによる消費の伸び悩みが景況感を圧迫する見込みです。

米消費者物価指数(7月) 8月10日(木)午後9時30分発表

6月の米消費者物価指数(CPI)は、総合で前年比3.0%の上昇と、前月の同4.0%から大幅に鈍化しました。また、変動の大きい食品、エネルギーを除くコアCPIも前年比4.8%の上昇となり、前月から伸びが鈍化しました。

米連邦準備理事会(FRB)が進めてきたこれまでの利上げなどの影響を背景にインフレが鈍化しつつあることが示されました。引き続き米労働市場や賃金動向は堅調な推移が想定されることから、インフレ鈍化の傾向は緩やかなものになりそうです。7月は総合で前年比3.3%程度、コアは同4.8%程度の伸びを想定しています。

 

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