来週の金融市場見通し(2023年5月15日~2023年5月19日)

■来週の見通し

米国では債務上限問題への警戒が広がっています。米国政府の債務が31兆4,000億ドルの法定上限に達しており、議会で上限の引き上げや適用停止を決めなければ、早ければ6月1日にも手元資金が尽き、政府がデフォルト(債務不履行)に陥る可能性があると伝わっています。仮に米国政府がデフォルトに陥れば、米国への信認が弱まり、金融市場が不安定な動きになる可能性があります。難航している民主党と共和党との協議に加え、米小売売上高など内外の経済指標や国内企業の決算発表も確認したいところです。

◆株価 :上値の重い展開に

日本株は、上値の重い展開が予想されます。日経平均株価は2万9千円台に乗っており、高値警戒感に圧迫される見通しです。とはいえ、国内企業の業績に対する期待に加え、米国における今年後半の利下げ期待などを踏まえれば、日本株が大きく下落する可能性は低いとみられます。ただ、米国では一部銀行の経営不安や政府債務上限をめぐる問題などが懸念されており、それらの動向次第では内外株価の変動性が高まる場面もありそうです。

◆長期金利 :引き続き居所を探る

日銀が長期金利をゼロ%程度に誘導するイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)の修正にすぐに動く可能性は低いとの見方が広がっていることに加え、4月の米消費者物価指数(CPI)などの伸びが市場予想を下回り、米長期金利が低下したことを受け、国内の長期金利は低下する動きになりました。日銀の政策修正観測が後退し、米利上げ停止観測が強まる中、米金利の動向などをにらみながら、居所を探る動きが続きそうです。

◆為替徐々に下値模索

ドル円は、上昇余地の限られる中、徐々に下値を模索する展開が見込まれます。米国のインフレは鈍化傾向にあることが4月の米消費者物価指数や生産者物価指数により示唆されました。それを受け、米長期金利はやや低下しており、ドル円も上値の重い状況です。また、米国の債務上限問題への警戒が広がっており、ドル円の上値を抑えそうです。来週のドル円は、米経済指標などを確認しながら、徐々に下値を模索する展開が見込まれます

◆Jリート :押し目を探る

日銀が大規模な金融緩和を継続するとの見方が意識される中、東証REIT指数は週初には年初来高値を更新しました。ただ、その後は利益確定売りが優勢になりました。4月の東京都心のオフィス空室率が2か月ぶりに低下したことや、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類」に引き下げられたことは安心材料です。日米の長期金利がじりじりと低下する中、相対的に高い分配金利回りに着目した買いなども下支えしそうです。

来週の注目点

GDP統計(23/1-3月期) 5月17日(水)午前8時50分発表

実質国内総生産(GDP)は、昨年10-12月期に前期比年率0.1%増と、小幅なプラス成長になりました。個人消費が小幅な伸びにとどまったほか、設備投資が前期比減となり、緩慢なGDP成長になりました。

1-3月期の実質GDPは、プラス幅が拡大する見込みです。新型コロナウイルスの感染対策緩和などにより、個人消費の伸びが高まった模様です。ただ、コスト高や世界経済の不透明感を背景に企業が設備投資に慎重となる中、当面、緩やかなGDP成長にとどまると予想されます。

米小売売上高(4月) 5月16日(火)午後9時30分発表

3月の米小売売上高は、前月比1.0%減となり、2か月連続で減少しました。高インフレや借り入れコストの上昇を受け、家計支出が冷え込みつつあることが示唆されました。特に自動車販売やガソリンスタンドの売上高は前月に比し、大幅なマイナスとなりました。

米国では堅調な労働市場と賃金上昇を背景に個人消費が景気を下支えしているものの、高インフレが長引く中、米金融不安がくすぶっており、金融状況が引き締まりつつあります。そのような環境下、今後の家計支出の動向は不透明感が強く、要注目です。

 

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