来週の金融市場見通し(2023年2月27日~2023年3月3日)

■来週の見通し

衆院で開かれた所信聴取で、次期日銀総裁候補の植田氏は「日銀が行っている金融政策は適切」と金融緩和を継続するとともに、「大規模緩和の検証については必要に応じて行っていきたい」と、大規模緩和の副作用の軽減などにも配慮する姿勢を示しました。市場では金融緩和の急激な修正の可能性は低いと受け止められ、安心感が広がりました。来週は参院での植田氏への所信聴取や東京都区部・消費者物価指数に加え、中国製造業購買担当者景気指数(PMI)や米ISM製造業景況指数なども確認したいところです。

◆株価 :底堅い展開か

日本株は、底堅い展開が予想されます。日銀の金融緩和策は4月発足の新体制下でも当面継続されるとの観測が、株価を下支えしそうです。米欧景気をめぐる過度な悲観が和らいでいることや、ドル円が底堅さを示していることも、日本株を支える見通しです。ただ、米国の利上げ停止に対する期待の後退が株価の上値を抑制しそうです。そうした中、多数発表される経済指標により、主要国の景気・インフレ動向を確認する必要があります。

◆長期金利 :こう着した動きが継続

長期金利は日銀の政策修正への思わくや米長期金利上昇を受け、一時0.505%まで上昇しました。所信聴取で植田氏は金融緩和を継続する姿勢とともに、インフレは1月がピークで来年度半ばにかけ2%を下回るとの見方を示しました。とはいえ、無理やり長期金利の水準を抑え込んでいるイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)を修正するとの見方は強く、引き続き日銀が許容する上限の0.5%近辺での動きが継続しそうです。

◆為替レンジ内で方向感模索

ドル円は、レンジ内で方向感の乏しい展開が見込まれます。米長期金利の上昇は一服しており、ドル円も134円台後半で推移しています。米連邦準備理事会(FRB)高官からタカ派発言が相次いでおり、米利上げ局面の長期化観測を背景にドル円の下値は限られそうです。他方、日銀の政策修正観測はドル円の上値を抑制する要因であることに加え、135円台では国内輸出企業のドル売りも想定されるため、当面、ドル円の方向感は乏しそうです。

◆Jリート :一進一退の中、上値を探る

東証REIT指数は、一進一退の中、週末は植田氏の所信聴取で金融緩和を継続する姿勢が示されたことから安心感が広がり、買いが優勢になりました。市場は新総裁下でのある程度の政策修正は織り込んできています。急激な金融政策の見直しの可能性は低いとみられる中、米長期金利の上昇が一服してくると、投資家心理が上向きそうです。引き続き、Jリートの利回り面での投資妙味や資産価格と比較した割安感が市場を下支えしそうです。

来週の注目点

鉱工業生産指数(1月、速報値) 2月28日(火)午前8時50分発表

鉱工業生産指数は昨年12月に前月比0.3%上昇し、95.8(2015年=100)となりました。化学工業、食料品・たばこ工業などが前月比で上昇した一方、汎用・業務用機械工業、鉄鋼・非鉄金属工業などが低下しました。

1月の鉱工業生産指数は、前月比低下が見込まれます。世界経済をめぐる不透明感が生産の重しになったとみられるほか、半導体などの不足が解消されない中、自動車などの生産回復は足元緩慢とみられます。ただ、中国景気の回復などを受け、生産は今後、底堅さも示す見通しです。

ISM非製造業景況指数(2月) 3月3日(金)24時00分発表

米供給管理協会(ISM)が発表した1月の非製造業景況指数は、55.2と前月の49.2から改善しました。米労働市場が堅調な状況の中、消費者は消費活動を再び活発化している模様です。

とはいえ、高止まりが続いているインフレや米連邦準備理事会(FRB)のこれまでの大幅な金融引締めを受けて、今後の個人消費の動向には不透明感も強いことから、今後の同指数のすう勢が注目されます。2月の同指数は54.5程度を想定しています。

 

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