来週の金融市場見通し(2022年11月28日~2022年12月2日)
■来週の見通し
米連邦準備理事会(FRB)が公表した11月開催の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、近いうちに利上げペースを減速することが適切になる可能性が高いとの見方が示されるなど、ややハト派的な内容となり、米金融引締めへの警戒感が後退することになりました。投資家の不安心理を表すVIX指数も20ポイント強と8月以来の水準まで低下しています。来週は、パウエルFRB議長の講演に加え、11月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)や週末の11月の米雇用統計なども確認したいところです。
◆株価 :底堅い展開に
日本株は、底堅い展開が予想されます。米国の利上げペースが減速するとの期待が、内外の株価を支える見通しです。ただ、米国の利上げについては不透明感が根強い上、世界景気の減速懸念も踏まえれば、積極的に上値を追う動きは限られるとみられ、株価が上昇した場面では、利益確定売りに押されそうです。そうした中、内外で発表される多数の経済指標や、中国における新型コロナウイルスの感染拡大やその抑制策の動向が注目されます。
◆長期金利 :膠着した動きが継続
FRBの大幅利上げペースの鈍化観測に加え、欧州中央銀行(ECB)も積極的な金融引締めを緩めるとの見方から欧米の長期金利が低下する中、国内の長期金利は日銀の許容する上限の0.25%付近での膠着した動きが続いています。FOMC議事要旨で多くの参加者が利上げ減速を支持していることが分かり、米金融引締めへの警戒は後退していますが、国内の長期金利への影響は限定的です。米金利にらみも動きの鈍い状況が続きそうです。
◆為替 :徐々に下値模索
11月のFOMC議事要旨で利上げペース減速の可能性が改めて示唆されたことから、米長期金利が低下し、ドル円は一時138円程度まで下落しました。複数のFRB高官からタカ派発言が続いており、日米金融政策の方向性の違いは引き続きドル円の下支え要因ではあるものの、米国のインフレピークアウトおよび利上げペース減速期待が高まる中、ドル円の上値は重く、米雇用統計に向けて徐々に下値を模索する展開が想定されます。
◆Jリート :上値を探る
東証REIT指数は、値ごろ感や、米長期金利の低下を受けた利回り面からの投資妙味から、やや買いが優勢になりました。一時4.3%台まで上昇した米長期金利が3.6%台まで低下してきていることは安心材料です。東証REIT指数はまだ1,900ポイント台で推移しており、割安感も残ります。米金融政策への警戒が一段と後退すると、投資家心理が改善し、上値を探る動きも出てきそうです。とはいえ、新型コロナの感染動向には注意が必要です。
■来週の注目点
鉱工業生産指数(10月、速報値) 11月30日(水)午前8時50分発表
鉱工業生産指数は9月に前月比1.7%低下し、98.5(2015年=100)となりました。特に自動車工業に関し、6月と7月に部品不足の緩和を受け大幅な増産となった後、9月はその反動で大幅減となりました。一方、電気・情報通信機械工業などは前月比増となりました。
10月の鉱工業生産指数は、前月比で低下が見込まれます。主要国の利上げや物価高に伴う世界的な景気減速が、生産を抑制したとみられます。また、ドル高・円安によるコスト高も、国内生産を圧迫した模様です。世界景気の低迷を踏まえれば、今後も生産の伸び悩みが予想されます。
米雇用統計(11月) 12月2日(金)午後10時30分発表
10月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数は前月比26万1,000人増となり、市場予想を上回りました。また、平均時給は前月比で0.4%増となり、前月から伸びが加速しました。他方、失業率は3.7%と、前月の3.5%から上昇しました。労働者への需要が引き続き強いことが示されたものの、やや強弱入り混じった結果となりました。
今後は、米連邦準備理事会(FRB)の積極的な金融引締めの影響や米景気の減速懸念から、次第に雇用者数の伸びは鈍化する可能性があります。11月の非農業部門雇用者数は前月比20万人増程度、失業率は3.7%程度を想定しています。
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