来週の金融市場見通し(2021年11月8日~2021年11月12日)

■来週の見通し

31日投開票の衆院選では、自民党が絶対安定多数を確保し、政治不安が後退しました。他方、米連邦準備制度理事会(FRB)は、量的緩和の縮小(テーパリング)開始を決めました。ある程度織り込み済みだったことや、パウエル議長が利上げに慎重な見方を示したことから、金融政策の正常化への警戒感は広がりませんでした。今後は利上げの開始時期やペースに関心が移ることになります。来週は、10月の米消費者物価指数(CPI)など内外の経済指標に加え、佳境を迎える中間決算発表も確認したいところです。

◆株価 :緩やかな上昇基調か

日本株は、緩やかな上昇基調が予想されます。米国の早期利上げ懸念がやや和らいでいることが、好材料となりそうです。また、衆院選で与党が勝利したことから、岸田政権による大型経済対策への期待も、株価を支える見通しです。とはいえ、内外の企業決算を確認する必要があるほか、米国株は高値警戒感から利益確定売りの出やすい状況とみられます。そうした中、日経平均株価が3万円近くに上昇した場面では上値が重くなりそうです。

◆長期金利 :低下余地を探る

衆院選で自民党が絶対安定多数の議席を獲得したことを受け、経済対策がいたずらに大型化するのは避けられるとの見方から国債増発懸念が後退しています。またパウエルFRB議長が早期利上げに慎重な姿勢を示し、米長期金利の上昇が一服していることから、国内の長期金利は低下余地を探ることも想定されます。もっとも、米金融政策が正常化に向かう中、一段の米金利の低下は限定的で、国内金利の低下も小幅にとどまるとみられます。

◆為替 :一進一退

FRBは予想通りテーパリング開始を決定し、米長期金利は一時1.6%台に上昇しました。しかし英国の中央銀行(BOE)が政策金利を据え置いたことで、世界的に利上げ期待が沈静化し、米長期金利は1.5%台前半まで低下しました。それを受け、ドル円も113円台半ばで推移しています。原油価格が高止まりする中、ドル円の堅調地合いに大きな変化はないとみられますが、当面は上値も重く、レンジ内で一進一退の動きが続きそうです。

◆Jリート : 底堅い動きの中、上値を探る

東証REIT指数は、10月下旬から2,000ポイント台後半でのもみ合いが続いています。新型コロナウイルスの新規感染者数が減少する中、経済活動の正常化への期待に加え、自民党が予想を上回る議席数を獲得し、政治不安が後退していること、また新政権の経済対策への期待や、米国や国内の長期金利の上昇が一服していることも安心材料です。底堅い動きの中、利益確定売りに押されながら、上値を探ることになりそうです。

来週の注目点

景気ウォッチャー調査(10月) 11月9日(火)午後2時発表

景気ウォッチャー調査の現状判断指数(DI)は、9月に前月差7.4ポイント上昇の42.1となりました。新型コロナウイルスのワクチン接種進展などを背景に、飲食などの指数が上昇しました。

10月の現状判断指数も、上昇が見込まれます。感染者の減少を受け9月末に緊急事態宣言が解除されたことから、飲食や小売など、家計動向関連の指数上昇が鮮明となりそうです。ただし、アジアなどにおけるサプライチェーン(供給網)の混乱や原材料・エネルギー高が続いているため、企業動向関連のうち製造業については、指数の低下が予想されます。

米消費者物価指数(10月) 11月10日(水)午後10時30分発表

9月の米消費者物価指数(CPI)は、総合で前年比5.4%の上昇となり、2008年以来の高い伸びとなりました。また、変動の大きい食料、エネルギーを除くコアCPIは同4.0%上昇となり、前月同様高い伸びとなりました。前月と比較すると、9月は、中古車価格、航空運賃、衣料品などは低下したものの、食品や住居費、住宅価格が上昇しました。

コロナ後の経済再開に伴い、原材料や部品等のサプライチェーンの混乱や人件費等の上昇は続いており、当面、米国のインフレ率は高水準を維持する可能性が高そうです。10月は総合で前年比5.8%程度の上昇、コアは同4.3%程度の上昇を想定しています。

 

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