来週の金融市場見通し(2021年7月12日~2021年7月16日)
■来週の見通し
世界的な新型コロナウイルス変異株の感染拡大が経済活動の正常化を遅らせるとの懸念が広がる中、米国ではコロナ禍からの景気回復が4-6月期をピークに鈍っていくとの見方が強まっています。他方、国内では政府が東京都に4回目の緊急事態宣言を発令することを決めたことは景気回復の重しになりそうです。来週は新型コロナの動向や内外の経済指標に加え、米銀大手を皮切りに本格化する米主要企業の4-6月期決算発表、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言なども確認したいところです。
◆株価 :やや軟調な展開に
日本株は、やや軟調な展開が予想されます。東京都に対する緊急事態宣言の再発令などが、株価を圧迫する可能性が高いとみられます。また、変異ウイルスへの世界的懸念や、米中の景気拡大ペースが鈍化しつつあるとの見方も、投資家心理の重しとなりそうです。ただ、米国の金融引締め懸念は和らいでおり、また、製造業の世界的な好調は当面持続する見通しです。よって、株価が下落した場面では、買戻しの動きが株価を下支えしそうです。
◆長期金利 :低位もみ合い
米景気が減速しつつあるとの見方に加え、新型コロナの感染拡大も警戒され、安全資産とされる国債を買う動きが優勢になりました。東京都への緊急事態宣言の再発令決定や、米長期金利が1.2%台に低下したことを背景に、国内の長期金利は週末には一時0.01%まで低下しました。その後は低下し過ぎとの見方も広がり、低下幅を縮小しました。しばらくは、コロナの動向や米長期金利をにらみながら、低位でもみ合う動きが続きそうです。
◆為替 :上値重い
新型コロナ変異株の世界的な感染拡大などを背景に、米長期金利は1.3%程度まで低下しています。それを受け、111円台半ばまで上昇していたドル円は、一時109円台半ばまで下落しました。米国に比べて日本の景気回復は遅れており、両国の金融政策の方向性の違いから、ドル堅調の流れに変化はないとみられます。しかし足元、日米株価が調整しており、リスク回避の円買いが優勢とみられることから、当面ドル円の上値は重そうです。
◆Jリート :底堅いも上値は重いか
東証REIT指数は6日まで3営業日続伸し、連日で年初来高値を更新しました。日米の長期金利の低下を受けて、相対的に高い分配金利回りに着目した買いが押し上げた模様です。その後は利益確定売りや、緊急事態宣言の再発令への警戒から、上げ幅を縮小する動きになりました。長期金利が低位で推移しており、Jリートは底堅い動きが見込まれるものの、新型コロナの感染拡大や緊急事態宣言が重しになり、上値は限定的になりそうです。
■来週の注目点
機械受注(5月) 7月12日(月)午前8時50分発表
機械受注統計によると、設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額は、4月に前月比0.6%増の8,029億円となりました。ただ、製造業が同10.9%増と好調だった一方、非製造業は同11.0%減となり、特に運輸業・郵便業、情報サービス業の減少が顕著でした。
5月の機械受注も、前月比増が見込まれます。引き続き、世界景気の回復を受け、半導体関連や自動車関連を中心に、製造業の受注増が見込まれます。一方、国内における新型コロナウイルスの感染継続などのため、非製造業については、持ち直しの動きは緩慢なものになりそうです。
米消費者物価指数(6月) 7月13日(火)午後9時30分発表
5月の米消費者物価指数(CPI)は、総合で前年比5.0%の上昇となり、市場予想を上回るとともに、2008年以来の大幅な伸びとなりました。また、変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIも同3.8%上昇と市場予想を上回り、1992年以来の高い伸びとなりました。
米国で経済活動の制限が緩和される中、政府の経済対策を一因とした財への強い消費需要で在庫不足が生じたことや、コロナ禍で打撃を受けた娯楽や飲食などサービス分野での消費回復が旺盛であることがインフレ圧力を強めている模様です。6月は総合で前年比4.9%程度の上昇、コアは同4.0%程度の上昇が見込まれます。
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