来週の金融市場見通し(2021年5月31日~2021年6月4日)

■来週の見通し

米国では18歳以上の半数が新型コロナワクチンの必要な回数の接種を完了したと伝えられる中、米連邦準備制度理事会(FRB)のクラリダ副議長が25日、量的緩和の縮小(テーパリング)に関して「今後数回の会合で議論を始める時があるだろう」と述べるなど、前回テーパリング開始を決定した2013年に似た状況になってきています。他方、国内では東京などへの緊急事態宣言が再延長されるとみられ、経済正常化はまだ先の話です。来週は週末に米雇用統計の発表を控え、様子見姿勢が広がることも想定されます。

◆株価 :底堅い展開に

日本株は、底堅い展開が予想されます。米国の景気拡大観測のほか、国内でも新型コロナウイルスのワクチン接種が進みつつあることが、株価を支える見通しです。また、足元の円安進行も、日本株の好材料となりそうです。とはいえ、米国株については高値警戒感が生じていることや、緊急事態宣言の延長を受け、国内景気の低迷が続くと見込まれることなどを踏まえれば、日本株が一方的に大きく上昇する可能性は低いとみられます。

◆長期金利 :日銀、米金利にらみ

長期金利は膠着した動きが続いています。米長期金利は2年国債入札などが順調な結果となり、1.6%を下回って推移していましたが、雇用回復への期待が強まり、再び1.6%に乗せました。国内の長期金利も、米長期金利の上昇を受け、週末は若干上昇しました。方向感が出にくい状況が続いていますが、日銀の6月の国債買入れ予定で、買入れ額が減額されると、金利に上昇圧力がかかる可能性もあります。10年国債入札も確認したいところです。

◆為替 :方向感模索

ドル円は、足元、米長期金利が1.6%を挟んで神経質な動きとなっていることから、レンジ内で方向感を模索する展開が続きそうです。ただ、6兆ドル規模とみられるバイデン政権の2022会計年度の予算案を受け、米景気回復ペースの加速やインフレ加速見通しが強まり、米長期金利が上昇すれば、ドル円は110円台半ば程度まで上昇する可能性もあります。とはいえ、日米実質金利差はマイナス幅を拡大しており、上値も限定的とみられます。

◆Jリート :値固め

東証REIT指数は、国内株の堅調な動きを受け、投資家心理が改善したことや、将来的な経済正常化への期待も手伝い、27日には2020年3月以来の高値まで上昇しました。米長期金利が落ち着き、国内の長期金利も低位で推移する中、相対的に高い分配金利回りに着目した買いも押し上げ要因とみられます。緊急事態宣言の再延長は重しながら、2,000ポイント台後半で値固めができると、節目の2,100ポイントを試す動きも出てきそうです。

来週の注目点

鉱工業生産指数(4月、速報値) 5月31日(月)午前8時50分発表

鉱工業生産指数は3月に前月比1.7%上昇し97.2(2015年=100)と、2か月ぶりの上昇となりました。業種別では、自動車工業、無機・有機化学工業などが上昇した一方、電気・情報通信機械工業などが低下しました。

4月の鉱工業生産指数も、前月比上昇が見込まれます。国内で新型コロナウイルスの感染が続いているものの、製造業については世界的に堅調を維持する中、日本の生産も底堅い動きが続く見通しです。ただ、半導体不足による自動車の減産が、鉱工業生産の増加を抑制しそうです。

米雇用統計(5月) 6月4日(金)午後9時30分発表

4月の米雇用統計において、非農業部門雇用者数は前月比100万人増との市場予想がある中、同26万6,000人増と市場予想を大きく下回りました。また、失業率は6.1%に上昇しました。米国の労働市場の回復の流れに疑念が生じる一方、失業保険給付の上乗せ延長や個人への直接給付が仕事への復帰を妨げているとの見方もあります。

とはいえ、新型コロナ感染拡大の影響を最も強く受けた飲食などの娯楽・ホスピタリティ分野では前月に続き雇用者数が伸びており、労働市場の回復の大きな流れに変化はないとみられます。5月の非農業部門雇用者数は前月比66万人増程度、失業率は5.9%程度を想定しています。

 

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