来週の金融市場見通し(2021年3月8日~2021年3月12日)
■来週の見通し
米国では、追加経済対策が今月中に成立する見通しです。この経済対策などでインフレ率が上昇するとの見方が広がる中、4日、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が、金利上昇に対し具体的な対策を示さなかったことから、米長期金利の上昇圧力が再び強まっています。これを受け、内外の株式市場が不安定な動きとなっており、為替市場ではドル高が進んでいます。そのため、来週も、米国などの金利動向が注目されるほか、各国の経済指標や新型コロナウイルスの感染動向なども確認したいところです。
◆株価 :内外の長期金利に注目
日本株は、やや軟調な動きが予想されます。内外の長期金利が再び上昇した場合、企業の資金調達コストが上がるほか、債券と比べた株式の魅力が低下することから、一段の株価下落が見込まれます。特に日本株は、年初来で米国株を上回る上昇率を示しているため、利益確定売りに押される場面もありそうです。ただ、金利の動きが落ち着いた場合、世界景気の回復観測やドル高・円安を背景に、日本株が上昇基調に転じる可能性もあります。
◆長期金利 :上昇圧力は残る
2日の10年国債入札を無難に通過し、長期金利は週半ばまで低下した後、米金利の上昇につられ、国内金利も上昇に転じました。しかし5日、日銀の黒田総裁が「長期金利変動幅を拡大する必要があるとは考えていない」と述べたことを受け、国内金利は大幅に低下しました。ただし、米国では、経済対策やワクチン普及による景気拡大観測などを背景に、金利上昇基調が継続しそうです。そのため、国内でも金利上昇圧力が残る見通しです。
◆為替 :堅調
パウエルFRB議長が市場の無秩序な動きや金融環境の引き締まりへの警戒を示したものの、米長期金利上昇の抑制について具体的な言及がなかったことで、米長期金利は再び上昇しています。それを受け、ドル円は堅調な展開です。108円到達で相応の達成感がある一方、日米株価が不安定な動きとなる中、決済通貨としてのドルへの需要が高まっていることもあり、来週もドル円は堅調な推移が見込まれます。
◆Jリート :方向感は出にくい
内外の長期金利が一旦上昇し、Jリートは軟調な動きとなりました。当面、分配金利回りの高さに着目した買いがJリートを支えるとみられる一方、金利上昇懸念が重しとなりそうです。国内金利は低下に転じたものの、日銀が長期金利上昇を容認する可能性は否定できず、また、Jリートの買入れ手法を見直す可能性もあります。よって、18-19日の日銀金融政策決定会合の結果を確認するまでは、相場の明確な方向感は出にくいとみられます。
■来週の注目点
景気ウォッチャー調査(2月) 3月8日(月)午後2時発表
景気ウォッチャー調査の現状判断指数(DI)は、1月に前月差3.1ポイント低下の31.2と、3か月連続の低下となりました。11都府県を対象とする緊急事態宣言の再発令などを背景に、家計動向関連、企業動向関連、雇用関連のすべてのDIが低下しました。
2月の現状判断DIも、新型コロナウイルスによる影響が続く中、低下が見込まれます。とはいえ、新規感染者は減少傾向にあるほか、家電販売などは好調であることなどから、DI低下は小幅なものにとどまりそうです。なお、3月以降については、緊急事態宣言の解除が徐々に進むとみられるため、DIは回復基調を示す見通しです。
米消費者物価指数(2月) 3月10日(水)午後10時30分発表
1月の米国の消費者物価指数(CPI)は、総合で前年比1.4%上昇となり、また、変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIは同1.4%上昇と、両指数とも市場予想を若干下回りました。米国では、引き続き新型コロナウイルスの感染による影響下、足元のインフレ圧力は抑制されていることが示唆されました。
しかし、今月中にも大規模な米追加経済対策が成立するとの期待が高まる中、今後、ワクチン接種がさらに進展するにつれ、需要が持ち直し、物価上昇圧力が徐々に強まるとみられます。2月は総合で前年比1.7%程度の上昇、コアは同1.4%程度の上昇が見込まれます。
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