読みにくくなった「日銀のETF買い」の法則
国内企業の決算発表が本格化する中で迎えた今週の国内株市場ですが、日経平均は17,000円台を維持し、概ね堅調な展開が続いています。これまでに発表された企業の業績および見通しを見る限り、円高による過度な業績下振れ警戒感を後退させている印象です。また、25日(火)に上場したJR九州の値動きも公募価格を上回る水準での推移が続いています。
10月も終盤に差し掛かっていますが、10月26日(水)取引終了時点までの値動きを振り返ってみますと日経平均は順調に値を戻しています。26日の日経平均終値は17,391円でしたが、前月末は16,449円でしたので、900円以上の上昇です。下げる場面があれば、「日銀のETF買い観測が相場を支えた」という場況解説を見ることが増え、26日の取引も、マイナス圏でスタートした日経平均が、日銀のETF買い観測をきっかけにプラスに転じ、そのまま終了しています(事実、この日は707億円のETF買いが行われました)。
これまでのところ、10月に行われたETF買いは14日、24日、26日の3回しかありません。ちなみに、9月のETF買いは11回でした。9月の営業日数は20営業日でしたので、ほぼ2日に1回のペースでETF買いが行われていたわけです。10月についてはかなりペースが落ちたわけですが、市場では、「日銀のETF買いは相場が下がった際に行われる」と思われてきました。実際に、9月は前日比マイナスとなった日が11日あったのに対し、10月はまだ4日しかありません。
日銀は、7月末に開かれた会合でETF買い入れ枠を年間約6兆円に増額を決めましたが、以降の買い入れ実績を辿ると、前日比で250円以上下落した日に実施が見送られたり、大して下落もしていないのに実施したりしています。そのため、必ずしも単純に相場が大きく下がれば、日銀がETF買いを入れるというわけではなさそうです。JR九州が上場する前日(10月24日)にも707億円のETF買いが行われていますが、この日の日経平均の前日比は49円高でした。
動向が読みにくくなったとはいえ、日銀のETF買いが相場を下支えする構図に変わりはないものの、日銀のETF買いについては、需給への影響をはじめ、価格形成の信頼度への影響、流動性への影響、株主構成への影響などの懸念や批判が多くあり、日銀はこうした指摘を踏まえつつETF買いを実施しているように感じます。
さらに、日銀が購入したETFは会計規定による簿価評価によってバランスシート上に記載されますが、今後相場が大きく下落し、対時価ベースで損失が発生した際には損失引当金を計上しなければならなくなります。すでに購入した分、これから購入する分も含め、かなりの規模ですので、バランスシートに与える影響が大きくなる可能性があります。日銀は来月下旬に財務諸表を開示する予定ですが、日銀が保有するETFの損益評価状況もチェックする必要がありそうです。
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