「安心感の持続性」がリスクとなった中国GDP
今週の国内株市場ですが、日経平均が節目の17,000円台を意識する堅調な展開が続いています。20日(木)の取引では直近高値である9月5日の17,156円を超える場面も見られました。前回の当コラムでも採り挙げた通り、最近になって中国の動向が注目され始めましたが、今週19日(水)にはGDPや主要経済指標(工業生産、小売売上高、固定資産投資など)がまとめてドンと発表されています。
その中国の経済指標が注目されるきっかけとなったのが、先週発表された9月貿易統計です。米ドルベースの輸出が前年同月比でマイナス10%、輸入もマイナスに沈んだことで警戒感が高まったのですが、今週発表されたGDP(実質)は前年比でプラス6.7%と、3四半期連続で横ばいという結果となり、ひとまず安心感を与えた格好です。他の指標も、工業生産の伸びがやや減速した以外は概ね堅調な内容でした。「程々に」緩和的な金融政策と景気を刺激する財政政策、住宅市場の伸びが成長を支えてきたと言えます。
ただ、足元の住宅市場については過熱感が指摘され、10月あたまの国慶節の連休前後から、住宅購入規制の強化に動く都市が増え始めています。実際に、中国の住宅販売額は1-9月期の間に、40%以上増加し、都市によってバラつきはありますが、住宅価格の上昇ペースも早まっています。
中国経済において住宅などの不動産が大きなウエイトを占めており、最近の不動産セクターへの抑制策が景気の下押し圧力となる可能性があります。さらに、中国は国有企業をはじめとする構造改革や債務問題、供給過剰問題にも取り組んでいる最中であり、大胆な景気刺激策を打つにもバランス感覚が求められます。
また、10月から、中国通貨の人民元がIMF(国際通貨基金)の特別引き出し権(SDR)の構成通貨に正式に組入れられましたが、人民元そのものは現在約6年ぶりの安値水準となっています。昨年のチャイナ・ショックでは人民元安と国内からの資金流出の不安が加速度的に高まりましたが、そもそも、SDR採用を決めたIMF自身が中国の債務問題を警戒し、国際決済銀行(BIS)も先日、「3年以内に融危機が起こる危険性がある」という見解を示したばかりです。
ここ数カ月間の中国経済指標は安心感をもたらすものが多く、市場も落ち着き、中国リスクが後退しているとの認識が広がっていますが、中国経済の背景を整理すると、あらためて、「減速」に転じてしまう火種を多く抱えていることに気付かされます。
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