「庶民派」の顔を見せ始めたトランプ米大統領のウラに潜む警戒感

2026/01/16

2026年相場入りから3週目を迎えた米国株市場ですが、これまでのところ高値圏での推移が続いているものの、昨年末終値から約4,000円も上昇する場面を見せている日経平均と比べると、イマイチ上値を伸ばせていない印象となっています。

米トランプ政権は、ベネズエラにおける軍事作戦の電撃的な実行、グリーンランド領有に向けた交渉、そして、イラン情勢への介入への言及など、2026年に入って国際社会への関与を強めている動きが活発になっていますが、そのウラでは、トランプ米大統領が国内向けに「庶民派」の顔をのぞかせている点は見逃せません。

その象徴的な事例として挙げられるのが、突如として浮上した「クレジットカード金利の制限」です。インフレと高金利に喘ぐ家計を救うという大義名分の下、カード金利の上限を期間限定とはいえ、一律10%に抑えるよう求めたこの指示は、金融業界に激震を走らせました。さらに、AI覇権の中核を担う巨大テック企業に対しては、データセンターの膨大な電力消費が市民の電気代を押し上げていると批判し、コストの企業負担を強要。不動産業界に対しても、住宅価格高騰の元凶として機関投資家による戸建て購入の禁止を示唆しています。

これらの政策については、今年11月に控えている中間選挙を前に、生活コストに苦しむ有権者の支持を得るためと思われますが、しかし、経済合理性の観点から見れば、いわば「徳政令」のようなこうした政策は米経済のブレーキとなりかねない深刻な副作用を孕んでいる可能性があります。

まず、クレジットカード金利への人為的な介入は、金融機関の収益構造を破壊します。リスクに見合った金利を取れなくなれば、銀行は低所得者層や信用力の低い個人への貸出を停止せざるを得ません。結果として招くのは、救済しようとしたはずの庶民が資金調達手段を失う「クレジット・クランチ(信用収縮)」であり、消費のエンジンを冷やすことになります。

また、電力コストの強制的な転嫁や不動産市場からの投資マネーの排除も、自由市場の価格メカニズムを歪める行為です。これは企業の設備投資意欲を削ぎ、AIインフラの整備遅延や、賃貸住宅の供給不足による家賃高騰という、意図とは逆の結果を招く「ブーメラン」となることも考えられます。

もちろん、現時点では、選挙向けのパフォーマンスと見做されていることや、議会の承認を必要とするなど、ハードルが高いことから、額面通りに政策が実現する可能性は高くはありません。とはいえ、政策の成否にかかわらず、トランプ米大統領による突然の「発言」によって、株式市場が揺るがされてしまうという不透明感がくすぶり続けることはリスクになります。

「大統領選後の2年目は株価が軟調になりやすい」というアノマリーがありますが、こうした中間選挙を意識した政治的なポジショントークが市場心理を揺さぶることに起因します。2026年相場もトランプ米大統領が相場のムードをガラリと変えてしまう場面が増えることになりそうです。

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