米国株を支える材料と「モメンタム」相場

2024/12/13

今週の国内株市場ですが、米国のFOMC(連邦公開市場委員会)と日銀の金融政策決定会合を来週に控える中、12日(木)の日経平均は取引開始後に4万台を回復する場面を見せるなど、これまでのところ、上昇基調を強める展開が目立っています。

こうした株高の背景には、米国株市場の強さがあります。とりわけ、11日(水)に公表された米11月CPI(消費者物価指数)の結果を受けたナスダック総合指数は、最高値を更新しただけでなく、初めて20,000pの大台に乗せています。

先週末に公表された米11月雇用統計のほか、今回の米11月CPIの結果も併せると、「来週のFOMCでの利下げ実施がほぼ確定的になった」という見方が強まったことが株価を支えている格好です。もっとも、11日(水)の他の米国株価指数を見ると、NYダウが小幅安、S&P500が小幅高にとどまっていますが、それでも株価は高値圏で推移しており、最近の米国株市場の強さは他国の株価指数と比べても際立っています。

このように、「利下げ方向の金融政策」のほか、「堅調な米国景気」や、「生成AIの物色の変化による米大手テック株への買い」などが米国株の買い材料となっているわけですが、年末相場に向けた「モメンタム(勢い)」相場の側面があることも意識しておく必要がありそうです。

まず、先ほどの米国の雇用統計やCPIの結果を見ると、「FOMCでの利下げ観測を後退させるものではない」程度となっており、必ずしも積極的に利下げを後押しする内容ではありませんでした。実際に、今回のCPIの結果は予想通りだったものの、前月比・前年比ともに前回から上昇していて、インフレの鈍化ペースが足踏みしています。

今回のCPIの結果のような傾向が続いてしまったり、トランプ次期政権が掲げる政策(関税強化策や減税、移民対策)の動向によっては、インフレ率が高止まりする可能性が根強く、今後の利下げピッチを巡る不透明感は燻ることになります。今回のCPIの結果を受けた米債券市場を見ると、米2年債と10年債の利回りがともに上昇で反応していて、株式市場とは「見ている景色」が違っている可能性があります。

さらに、足元の米国株については、PER(株価収益倍率)の水準や、S&P500の株式益回りと米10年債利回りとのあいだに差があまりないことなど、割高感があるほか、先日のトランプ次期政権の財務長官に指名されたスコット・ベッセント氏の登場によって、懸念されているネガティブな側面(財政赤字の拡大やインフレ再燃)が抑制されるとの期待が先行していること、4年前のM&Aをめぐって、中国が米半導体大手エヌビディアの調査を始めたことなど、米中対立の動きなどもあり、不安の火種がないわけではありません。

もっとも、モメンタム相場というのは、「株価が高いか安いか」よりも「相場が強いか弱いか」で動く局面であるため、株価水準が割高であろうとも、しばらくはこのままの勢いで株価が上昇していくことが予想されますが、いったん上昇が止まり、調整局面を迎えた際には、株価の下落が意外と大きくなるかもしれないことは押さえておいた方が良いかもしれません。

楽天証券株式会社
楽天証券経済研究所 土信田 雅之が、マクロの視点で国内外の市況を解説。着目すべきチャートの動きや経済イベントなど、さまざまな観点からマーケットを分析いたします。
本資料は情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。
銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。
本資料の情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本資料の記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本資料の記載内容は、予告なしに変更することがあります。

商号等:楽天証券株式会社/金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第195号、商品先物取引業者
加入協会:
  日本証券業協会
  一般社団法人金融先物取引業協会
  日本商品先物取引協会
  一般社団法人第二種金融商品取引業協会
  一般社団法人日本投資顧問業協会