株式市場の割高感と「相場の牽引役」の揺らぎ
今週の株式市場ですが、これまでのところ、買いの勢いに欠けている展開が目立っています。
日経平均は38,000円台を維持しているものの、売りに押される場面が多くなっているほか、米国株市場に目を向けても、主要株価指数(NYダウ・S&P500・NASDAQ)が、25日移動平均線をサポートにしつつ、下値が堅い一方、先週あたまに最高値をつけて以降、再び上値を伸ばす力強さが感じられない印象となっています。
そんな中、「相場の起爆剤になれるか」として注目されていたのが、米半導体大手エヌビディアの決算です。20日(水)に発表された決算(2024年8月-10月期)の内容を見ると、売上高が前年同期比で94%増加し、純利益も約2倍となっており、四半期ベースで過去最高を更新したほか、市場予想も上回るなど、数字だけで見ればかなり強い結果となりました。
ただし、この決算を受けたエヌビディア株は、20日の米株市場の時間外取引で下落という初期反応を示し、この流れを引き継いだ21日(木)の日経平均も下落して始まる展開となりました。
決算発表を通過したことによる出尽くし感や、市場の期待には大いに応えたものの、予想を裏切るほどの強さを示せなかったことなどによる売りが出たものと思われます。先ほども述べたように、今回のエヌビディアの売上高増減率(前年同期比)は94%でしたが、1年前の200%超えをピークに、以降は低下傾向にあるほか、次の四半期(2024年11月-2025年1月)の売上高見通し(375億ドル)も、市場予想(370億ドル)とあまり変わっておらず、成長の勢いという面では減退傾向にあると言えます。
もっとも、他の企業や業種と比べれば、まだ十分に高い成長をしていることは事実ですので、決算を材料にこのままエヌビディア株が下落し続けるとは考えにくいですが、かつてのような相場を牽引する力を失いつつあるのかもしれません。
こうしたエヌビディア決算だけでなく、最近の株式市場では、相場の柱となるような牽引役が徐々に減少する一方で、むしろ懸念材料が増えてきていると思われます。いわゆる「トランプトレード」きが一服しつつあるほか、次期トランプ政権のネガティブな側面を警戒する動き、中国経済や社会の低迷や、地政学的な不安(ウクライナ、中東地域)、そして金融市場では株高と金利高の同時進行といった不安定さも気掛かりとなっています。
とりわけ、米国株市場は、S&P500の長期PER(CAPEレシオ)が35倍を超えていて、かなり割高な状況となっています。ここからの株高は「割高感との勝負」なるだけに、相場の牽引役の不在は今後の株価の上値が重たくなるだけでなく、ちょっとした悪材料をきっかけに大きく調整する展開となる可能性もあります。
相場のタイミング的には、「米大統領選挙後の株は上昇しやすい」というアノマリー(経験則)や、クリスマス商戦への期待、年末ラリーといった具合に、株高になりやすい相場地合いではありますが、今年については、「例年とは違う展開になるかもしれない」ことを念頭に置いて取引に臨んだ方が良いかもしれません。
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