日経平均の「危険ゾーン」と相場の視点

2020/03/20

週末に連休を控えている今週の国内株市場ですが、日経平均は18日(水)までの3日間で17,000台後半から16,000円台前半の値幅内で上げ下げを繰り返していています。

 

確かに、次々と節目を下抜けるような急落ピッチは一段落しつつあるように見えますが、日々の取引時間中の株価の浮き沈みはまだ激しく、いつ下げが再開してもおかしくない状況です。海外株市場に目を向けても軟調な展開が目立ち、米NYダウが20,000ドルを下回るなどの動きを見せています。

 

最近では、過去の株価急落時の状況と比較して、今回の株価急落が「リーマン・ショックと似ている」といった議論も増えてきましたが、いずれにせよ足元の相場は「事象」・「不安」・「対応」の視点で捉える必要があります。

 

つまり、新型コロナウイルスの感染拡大や原油安などの現在発生している「事象」に対して、景気減速や企業業績の悪化、信用リスクといった「不安」が高まり、金融・財政政策などの「対応」がどこまで事象や不安に抗えるかといった構図です。

 

足元の株価急落は「不安」がかなり先行していると言えますが、厄介なのは、その背景にある「事象」がまだ現在進行形であり、多くの人が安心する最大公約数的な「対応」が定まらず、三者の関係が微妙になっていることです。

 

例えば、トランプ米大統領が先週の会見で、30日間にわたる欧州諸国からの入国制限の実施を発表し、株式市場が下落で反応しましたが、このように、新型コロナウイルスを抑制するために採った強硬な「対応」が、結果的に実体経済悪化の「不安」をあおってしまうことになりました。

 

また、「事象」の悪化に伴って、金融・財政政策などの「対応」に求められるハードルが上がってしまい、中途半端な内容ではかえって「不安」が高まってしまうということも考えられます。今週も国内外で様々な経済対策が打ち出されていますが、株式市場の反応はイマイチです。

 

そのため、「事象」・「不安」・「対応」の掛け合わせが好転しない限り、株式市場は簡単に下げてしまう展開になり得るわけです。とりわけ、日経平均で「危険ゾーン」と思われるのが16,000円台割れの水準です。

 

その理由とされるのが「日経平均リンク債」の存在です。かつてのリーマン・ショック時も相場の波乱要因のひとつになった経緯があります。日経平均のオプション取引を取り入れた仕組み債のことですが、日経平均の値動きがある程度の範囲に収まっているあいだは元本が維持され、比較的高い利回りが期待できるという商品です。

 

ただし、値動きが大きくなり、想定の範囲を超えて下落した場合は元本割れが発生します。具体的には「ノックイン価格」と呼ばれる水準を下回った時がそれに該当しますが、リンク債を購入した投資家の損失発生はもちろん、組成した業者もポジション管理や損失回避のために処分売りを出してくる可能性があります。

 

日経平均が20,000円を超えていた時期に設定されたリンク債は15,000円~16,000円あたりをノックイン価格として設定しているものが多いと言われているため、実際に16,000円台割れとなった場合には下げ足が早まってしまう場面があるかもしれません。

 

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