FRB利上げ打ち止め示唆か─日米株、息の長い上昇局面へ

2018/09/27

 

「緩和的」との文言削除や「根拠なき熱狂」否定で、力強い米国景気ひいては株高が長期化しそうです。

「緩和的」文言削除とインフレ見通しを市場は好感

FOMC(米連邦公開市場委員会)は9月会合で8回目となる利上げを決定しましたが、長期金利が低下するなど米国債は買われ、市場に好感されました。通常、利上げは短期的には米国債の売り要因です。しかし今回は「利上げ打ち止めに近づいた」との観測が、売り要因を打ち消したようです。

まず、(i)声明文から現状の金融政策が「緩和的」との文言が削除されたことに市場は反応しました。「景気を過熱も冷却もさせない中立的な政策金利の水準に到達した」とのメッセージと受け取ったのです。

市場は「これでリーマンショック後の景気悪化に対する政策対応が終了した」として、「今後は毎回の会合でその都度、インフレ/雇用情勢をみて利上げの是非が判断される」と受け止めたようです。たとえれば「これまで自動操縦モードで利上げしてきた」「今後は手動モードに切り替え操縦桿(かん)を握り、コックピット(操縦室)で視界に入ってくるインフレ/雇用情勢を肉眼で確認しつつ利上げを判断する」ということでしょう。

同時に、(ii)FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長が会見で「インフレ率は物価目標の2%近辺にとどまる見通し」「予想外の上ぶれは見込まれない」と発言したことにも市場は反応しました。つまり、上述(i)も考え合わせると、「手動操縦モードに切り替わったFRBの“機長”にとって、コックピットで視界に入っているのは(物価目標を上ぶれしない程度の)穏当なインフレ率」ということです。利上げ加速が必要なインフレの過熱は視界に入っていないのです。「利上げ打ち止めを示唆した」との観測は、これら(i)(ii)が根拠となっているようです。

利上げ積極派の抑え込みには時間を要するか

しかも、会見で相次いだ質問へのパウエル議長の答えぶりが、「利上げ打ち止めが近い」との市場の確信を強めたようです。各紙の記者の関心は「政策金利の見通しを示すドット・チャートが前回からほぼ不変なのに、緩和的との文言だけが先行して早々と削除されたのはなぜか?」との点に集中しました。

確かにドット・チャートは、来年以降は中立的な水準(=3.0%)を超え政策金利が3.4%に向け上昇していく姿──すなわち引き締め局面入り──を示したままです。一方、今回の利上げで2~2.25%となった政策金利が(上述3.0%に達していないのに)「もはや緩和的でなく中立的な政策金利」と示唆されたのです。「一体、どちらが正しいのか?」との記者の疑問は当然でしょう。

パウエル議長は「ドット・チャートはFOMC委員の一人ひとりが示した各自の見通しをそのまま集計したもの。一方、緩和的との文言削除はFOMCが承認した、委員の総意である」と答えたのです。なんとも苦しい、突き放したような答弁ですが、パウエル議長が思わず口に出してしまった本音でしょう。利上げ積極派の抑え込みに、相当苦労している様子です。

前回会合(7月31日~8月1日)の議事要旨には「今秋の会合で金融政策運営上の枠組み討議を再開する」という、パウエル議長の発言と特定できる異例の記述がありました。利上げペースに影響してくる、FRBバランスシートをどこまで縮小すべきかの討議再開と考えられます。大幅に縮小すれば利上げペースはゆるやかで済みます。この点は今回、声明文でも会見でも、一切触れられませんでした。

「今秋」なので、今回でなく次回11月会合で討議が再開される可能性もあるのですが、パウエル議長の上述の突き放したようなドット・チャート発言から判断すると、今回9月会合で討議再開したものの、紛糾した可能性が濃厚です。

とは言うものの、緩和的との文言削除には成功し、利上げ消極姿勢を鮮明に打ち出すパウエル議長のスタンスは、「利上げ加速が(企業や家計の銀行借入を困難にし)米国景気の腰を折る」とのIMF(国際通貨基金)世界経済見通しに対する反論とも考えられます。米国景気には息の長い拡大が期待できそうです。

「根拠なき熱狂」ではないとのパウエル議長

FRBの利上げ消極姿勢は、米国株──ひいては日本株にとっても株価上昇要因です。加えて会見では、このところ連日、過去最高値を更新する米国株式市場は「根拠なき熱狂」ではないか?との記者の質問に、パウエル議長は「過熱感はみられない」と一蹴したのです。かつて株価を下支えした元FRB議長の発言は「グリーンスパン・プット」と好感されましたが、今回はまさに「パウエル・プット」です。

先行き米国株価は、11月6日の中間選挙を控え、変動性が高まる可能性があります。もっとも、米中首脳会談が中間選挙後の11月下旬に設定されたことで「これまでの双方の関税が撤回される」との期待等が株価下支え要因となっています。たとえ貿易摩擦の緊張緩和が先送りされるリスク・シナリオが現実化しても、10-12月期決算シーズンが始まる来年1月半ばには力強い景気拡大による好調な企業業績を買い材料に株価反発が見込まれます。下落局面はむしろ押し目買いのチャンスとも言えるかも知れません。

明治安田アセットマネジメント株式会社
明治安田アセット/ストラテジストの眼   明治安田アセットマネジメント株式会社
かつて山間部の中学校などに金融教育の補助教材を届けていた頃の現場の先生方の言葉が、コラム執筆の原動力です。「金銭面で生きる力をつける教育は大切だが、私自身、株式など金融は教えられないのですよ」と。
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