2018年展望─米国に設備投資ブーム到来で日欧株価も上昇へ

 

景気過熱で加速する米国利上げペースに市場が動揺しても急落は一時的、押し目は浅そうです。

2018年を展望すると、米国株高が日本や欧州等へ波及した流れが、2017年よりやや強まりそうです。トランプ減税の実現による「米国景気が一段と力強さを増す」「自社株買いが増える」との観測が原動力です。米国株高でグローバル株式ポートフォリオに占める米国株比率が上昇すれば、他の日本株等の比率を一定に保とうとする内外の機関投資家からの機械的な日本株等の買いにもつながり、日経平均株価は2万5千円を上抜けする局面もありそうです。

2018年中の最大のリスク要因は、景気過熱に伴う米国長期金利の大幅上昇(3%超)や、米国利上げペースの早まり等をきっかけに、世界同時株安となる可能性です。

もっとも、トランプ減税──とりわけ企業の設備投資『即時償却』によって「設備投資ブームが到来する」との観測が急浮上しています。市場の不安「あと2年もすれば米国は景気後退」が払拭されることで、むしろ「株安は押し目買いのチャンス」との強気相場が予想されます。

また、米国景気が過熱すれば日米金利差の拡大観測で1ドル=120円超の円安も視野に入り、日本株や外株・外債投資に追い風となりそうです。

 

トランプ減税で米国景気は過熱へ

米国の税制改革法案は、トランプ大統領が署名し2017年末に成立しました(12月22日)。とりわけ企業の設備投資の『即時償却』を認める措置が注目されます。当初の約5年間(遡及適用2017年9月27日~2022年末)は全額100%償却が可能、その後、毎年10%幅で償却枠を減らし2026年末まで続けられます。「即時償却は非常に大きな設備投資の誘因。目先の数年間は設備投資ブームが到来しうる」(米国ハーバード・ビジネススクールM.Desai教授、12月26日付学内報対談)との見方が目立ちます。

即時償却の景気刺激効果はかなり大きいようです。「リーマンショック後など、リセッション(景気後退)回避策として定番となった即時償却は、将来のリセッションに備え、今は使わず残しておくべき」との批判も出た程です(ロイター通信、2017年10月4日付)。また「2022年末から23年頃には供給過剰をもたらしリセッションを招く」(同)とも批判されました。しかし逆の見方をすれば、(供給過剰となるまで)初期の数年間は、市場における米国景気の先行き不安──「あと2年もすれば米国は景気後退となる」が払拭され、景気は一段と力強さを増しそうです。

米国利上げペースの早まり等は株安要因

トランプ減税は景気過熱をもたらしかねず、FRB(米連邦準備制度理事会)は身構えています。「税制改革が実施されれば設備投資の勢いが一段と増す」(11月FOMC議事要旨)からです。「もしも財政面での景気刺激策(=トランプ減税)や金融緩和が景気過熱をもたらしインフレ圧力が高まれば、利上げペースを早める」方針です(12月FOMC議事要旨)。利上げペースを抑える効果のあるFRBバランスシート縮小策にも既に着手し警戒しています。

市場も「もしも利上げペースが急に早まったり、長期金利が急上昇すれば、(企業や家計の銀行借入を困難化させ)リセッションの引き金を引く。世界的な株安連鎖にもなりかねない」と警戒しています。

もっとも設備投資ブームとなれば話は別です。初期の数年間はリセッション不安は払拭され、むしろ「株安は押し目買いのチャンス」との強気相場が予想されます。急落は一時的で、押し目は浅いかも知れません。

ちなみに、即時償却は主に中小企業向けの税制優遇措置とされます。中小企業は米国景気の先行きに自信を深めており、中小企業楽観度指数(全米自営業者連盟NFIB)は2016年秋に大統領選トランプ氏勝利を受け急上昇した後、再び上昇し始めています(図表参照)。一方、大企業については、法人税率引き下げ効果もあり潤沢な手元資金を使った「自社株買いやM&A(合併・買収)につながる」との観測等でトランプ減税が株高要因視されているようです。

20180109

明治安田アセットマネジメント株式会社
かつて山間部の中学校などに金融教育の補助教材を届けていた頃の現場の先生方の言葉が、コラム執筆の原動力です。「金銭面で生きる力をつける教育は大切だが、私自身、株式など金融は教えられないのですよ」と。
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