「高い経済成長性を誇るAAA国」─長期分散投資先としての豪州

 

資源価格の大幅下落にも適応してきた「活気あふれる」豪州経済は、長期投資向きとみています。

投資対象国の評価法─機関投資家の慣行

「カントリーリスク」という言葉をご存知でしょうか? 海外投資する際に機関投資家等が重視する、投資対象となる国(=ソブリン)に固有のリスクのことです。その国の政府が発行する国債がデフォルト(=国の債務不履行)する確率を示唆する「ソブリン格付」とほぼ同義です。厳密には両者は異なる概念ですが、「市場参加者はカントリーリスクの大きさを示す指標としてソブリン格付を利用することがよくある」と言われます(注1)。オーストラリア(以下、豪州)のカントリーリスクは、どう評価されているのでしょうか?

(注1)格付会社スタンダード&プアーズ(S&P)「カントリーリスクの手法と想定」、2014年2月5日p.3

豪州がAAAと判断される理由

豪州のソブリン格付は、格付会社が大手3社とも最上格の「AAA(トリプルA)」と判断しています。その根拠として、例えばムーディーズは3点を挙げており、その第一のポイントが「豪州経済の外的ショックに対する適応能力の高さ(economic resilience)」です(注2)。

(注2)Rating Action: Moody’s affirms Australia’s Aaa rating: maintains stable outlook, 17 Aug 2016

具体的には、(i)資源価格の下落で打撃を受けた豪州経済が、すみやかに回復し、外的ショックに対する適応能力の高さをみせたことや、(ii)長期的にみるとAAA格の国々の中で比較して高い経済成長率が見込まれること等を指摘しています。

(i)資源価格の下落への適応能力

「『コモディティ(≒資源価格)のスーパーサイクル』終焉等への、豪州経済の適応能力の高さは驚くべき(miraculous)」(英エコノミスト誌、2017年3月9日)との論調も目立ちます。

『コモディティのスーパーサイクル』とは、(歴史を振り返って確認するほど)超長期の資源価格の循環的な値動きを指します。直近では2000年代中心に大幅な上昇局面が約10年間続いた後、大幅に下落しました。豪州の主力輸出産品の鉄鉱石でみますと、2011年に1トン当たり180米ドル台でピークをつけた後、2015年末には40米ドルを割り込みました(【図表1】参照)。高値の4分の1以下の水準です。大打撃を受けた豪州経済ですが、立ち直りも早く、過去25年間、リセッション(2四半期連続のマイナスの経済成長率)に陥っていません。

(ii)AAA格の国々の中で高い経済成長性

豪州は、AAA格の国々の中で、高い経済成長率が見込まれる国です(【図表2】参照)。S&PもムーディーズもそろってAAA格と判断する国々の中で比較すると、(経済規模の小さい)ルクセンブルクに次いで、2番目に高い経済成長性です。理由は、前出のムーディーズ声明文は、他のAAA格の国々と比較して、豪州経済の(移民流入による)旺盛な人口増加や流動性の高い労働市場、高齢化スピードの遅さ──すなわち「活気あふれる」豪州経済の強さを指摘しています。

格付実務の現場では、やや長めの「5年先の姿」を念頭に格付を判断します。(i)大幅な資源安にも適応能力の高さをみせた「活気あふれる」豪州経済は、(ii) 高い経済成長性を誇るAAA国でもあり、長期分散投資向きと考えられます。

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明治安田アセットマネジメント株式会社
かつて山間部の中学校などに金融教育の補助教材を届けていた頃の現場の先生方の言葉が、コラム執筆の原動力です。「金銭面で生きる力をつける教育は大切だが、私自身、株式など金融は教えられないのですよ」と。
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