歴史的大変革時代、株主資本主義の勃興
【ストラテジーブレティン(200号)】
(1) 歴史的大変革時代の到来に議論の余地なし
大変革期到来
インターネット、AI(人工知能)、ロボットと、通信情報革命の進展は止まるどころか、一段とうなりをあげて加速している。十年後は、我々の生活、ビジネス、経済、社会が、いまとは比べものにならないほど大きく変わり、成功の夢にあふれた時代になっているだろう。まさに現在は人類の歴史上屈指の大変革期である。西洋人が新大陸を発見し、夢と希望をもって海を渡った十五世紀の大航海時代。ゴールドラッシュに誘われ、アメリカ人が西部の荒野を突き進んでいった十九世紀の大開拓時代。西洋文明を乾いたのどを潤す水のごとく吸収し、近代化を推し進めた明治大正期の日本の大発展期――。そんなロマンにあふれた時代と比肩できるほどの、いや、もしかしたらそれ以上の大激変期かもしれない。
サクセスストーリーと斜陽化の混在
大転換期には多くのビジネスチャンスが存在する。アメリカンドリームという言葉は有名であるが、サクセスストーリーはアメリカだけの特権ではなく、中国アジアなどに満ちあふれている。しかし、他方でかつての主役が軒並み退場を迫られつつあるという現実もある。インターネットに駆逐される既存流通網、既存の銀行システム、既存の情報メディア、出版・テレビ・新聞などが斜陽化することが見えてきた。特に銀行預貸業はブロックチェーン技術の発展により、かつてのフィルム産業、レコード産業のごとく、霧消するかもしれない。
斜陽化する銀行預貸産業、台頭する株主資本主義
だが心配するには及ばない。金融の新旗手として株主資本主義が大きく台頭しつつある。今や株式市場は配当と自社株買いにより、企業余剰を実体経済に還流させる最大のチャンネルとなっている。またM&Aによる創造的破壊の舞台である。加えて新技術があらゆる局面での裁定を可能にし、利ザヤが極限まで低下する中で、株式と他の金融資産との間には顕著な価格差が存在している。日本の国債利回りや預金金利がゼロ、それに対して株式配当2%、株式益回り7%と極端である。この株式の割負け(相対的高リターン)は世界共通である。そこは最後に残された巨大な裁定投資の処女地といえる。狭義の金融(債務・元本保証の金融商品)のリスクがテクノロジーによって計量化され薄利化していくのに対して、株式は計測不能の不確実性そのもの、そこに金融利益の源泉が集約されていく時代である。新産業革命は、金融の担い手を銀行から証券会社に転換させることになるだろう。