トランプ政治の陰の主役、強いドル~国境税が最後の一押し、超ドル高時代へ~

2017/01/12

【ストラテジーブレティン(175号)】

 

具体化しつつある国境税創設
共和党、トランプ次期大統領がともに主張する国境税(=border tax adjustment)が次期政権の経済政策の柱に浮上してきた。輸入品に課税し、輸出品に税優遇を与えるというもので、大統領と上下両院を共和党が制したことにより、俄然その実現性が強まってきた。トランプ氏はツイッターでトヨタのメキシコ工場建設を批判して「Build plant in the U.S. or pay big border tax(米国で工場をつくれ、それがいやなら国境税を払え)」とコメントしている。一連の企業に対する高圧的な米国工場建設強要は、国境税創設を念頭に置いたものであることをうかがわせる。

国境税は不公平な貿易税制の是正の試み、保護主義とは言えない
国境税とはとんでもない保護主義的主張と見えるが、自由主義を標榜する共和党下院の選挙アジェンダ(“A Better Way”)の柱であり、一概に保護主義とは言えない。なぜなら消費税(付加価値税)を導入していない米国は消費税(付加価値税)を導入している、大半の国(欧州諸国は20%前後、中国17%、韓国10%、日本8%)に対して貿易競争上不利になっているからである。消費税(付加価値税)を実施している国は輸入品に消費税(付加価値税)が課される(日本の場合8%)一方、輸出品に対しては輸出企業が原材料やサービスなどの購入時に支払った消費税が還付されている。いわば他国は輸出に補助金を輸入にペナルティーを科しているわけで、消費税を導入していない米国には不利になっている。この不公平さを是正しようというものが、国境税創設(border tax adjustment)の趣旨である。当然の帰結として輸入抑制、輸出促進により国内生産が喚起され投資を引き起すので、成長を押し上げ、またインフレ圧力を高める、と期待されている。

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