鍵は中国「毒」の伝染遮断、資本規制だ~世界株安底入れのかすかな曙光見え始めた~

【ストラテジーブレティン(155号)】

新関*:武者リサーチ代表の武者陵司先生にお話しをお聞きします。本日のテーマは『鍵は中国「毒」の伝染遮断、資本規制だ~世界株安底入れのかすかな曙光見え始めた~』ということで宜しくお願いします。中国関連で世界の経済金融のオピニオンリーダーである「エコノミスト」誌と「フィナンシャル・タイムズ」紙から『中国は資本規制を導入するべきだ』という記事が出されました。その概要と重要性を教えてください。
新関  武者リサーチディレクター

武者:世界の株安、今年一月に入って突如15%から20%近い同時株安が起こっているということで人々は不安につつまれていると思います。端的に言って、この大きな不安を根底から払拭する動きが出始めたというのが私の解釈です。ポイントは、時間は少しかかるかもしれませんが、中国にあるデフレの様々な毒素を遮断するということが起きそうだということです。そうなると世界の株安は一転大幅な株価上昇に転ずる可能性が出てきます。

鍵は、中国から海外に伝染している最大の経路は中国からの資本流出、それによる人民元暴落、その結果として起こる世界のデフレという心配だったと思います。従ってこの不安を遮断するためには、中国からの資本流出が断たれ、人民元が際限なく下落していくという人々の不安が止まれば、一気に局面は好転するわけです。

そういった点で注目したいのは「エコノミスト」と「フィナンシャル・タイムズ」という世界の金融経済のオピニオンリーダー的な二つのメディアが相次いで中国は資本規制を導入するべきだという明確なオピニオンを発表したということです。もっとも注目するべきなのは1月26日のフィナンシャル・タイムズの社説で”Capital control may be China’s only real option” という記事が出たことです。つまり資本規制が今の中国にとって唯一選択可能な政策手段だという記事です。奇妙な記事です。これまでエコノミストもフィナンシャル・タイムズも中国は規制を緩和し、資本取引を自由にし、それによって市場経済を使った経済の改革を進めるべきだという主張でした。その主張とは全く逆の資本規制を強化しろ、これは極めて奇妙とみえる記事ですが、これこそが現在の情勢の鍵だということであります。

もう一つは少し前1月16日付のエコノミスト誌に同じような記事がカバーストーリーとして掲載されています。この号の表紙には荒れ狂う龍の上に乗って振り落とされまいと、しがみついている習近平国家主席の絵が描かれていますが、これの趣旨も中国は資本規制を導入するべきだということです。曰く、”One step back, two forwards” 。つまり二歩進むためには一歩後退するべきだという記事です。それは1月19日の日経新聞に全訳で紹介されています。資本規制強化で危機に備えろ。つまりエコノミストもフィナンシャル・タイムズもそしてそれを受け継いだ日経も主張しているのは、危機回避のためには徹底的な資本のコントロールをやるべきだという記事です。1月8日に私もレポート(ストラテジーブレティン154号『中国経済のフリーランチ、終わりの始まり~世界連鎖株安は中国の市場封鎖で下げ止まる~』)を書いて、これこそが状況を転換させる鍵だと主張しました。

(http://www.musha.co.jp/attachment/569421e1-7818-4199-870f-333d85f2cfe7/bulletin_j_20160108.pdf)

正しくそのようなオピニオンがこのような世界の最も人々が注目するメディアの中心に登場したということは驚くべきことであると同時に、非常に迅速に世界の人々のオピニオンが収れんしていく可能性を示していると思います。

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