円急落が「デフレ均衡」を瓦解させる
【ストラテジーブレティン(316号)】
円安の嵐は、豊かな日本を呼び戻すトリガーになる可能性は高い。
➢ 名目成長ゼロ・物価上昇率ゼロ・金利ゼロの頑強な安定(「デフレ均衡」)が続いたの
は、日本からの資本漏出(=ビジネス機会の漏出)が続いていたからである。
➢ 超円安は、日本経済に全く寄与しない形でため込まれていた巨額の対外資産の国内還
流を引き起こし、日本に固く定着したゼロ・ゼロ・ゼロの「デフレ均衡」を瓦解させ
るトリガーになる、と考えられる。
➢ 政策担当者の構想力が強く求められる局面である。
(1) 失われた30年を強固にした「デフレ均衡」
デフレでなぜ長期安定がもたらされたのか
本来デフレは均衡しない。デフレとは資本が増殖を求めて価値形態が変態をすることを止め、貨幣のままでとどまることを強制するものである。よって必然的に大恐慌などのように経済収縮のスパイラルをもたらす、との考えが2000年頃までの経済学の常識であった。しかし日本では、「デフレ均衡」というデフレ下での強固な経済安定が長らく定着した。デフレ下でもマイルドな実質成長はあり、国民生活の破局は免れた。また日本では欧米のような成長に基づく格差拡大、中間層の落ちこぼれによる社会分断、ポピュリズムの台頭などの現象は顕著にはなっていない。そうしたことから成長を追求しなくてもよいではないか、という「下山の思想」「脱成長の定常社会」など、停滞肯定思想も蔓延してきた(注)。
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