FM 今月のポイント( 2018年2月)
*2日のNY株式市場は想定外の大幅下落となりました。NYダウが前日比 665ドル安(2.5%下落)の 25,520ドルで終了、1日の下げ幅としては9年2ヶ月ぶりの大きさとなりました。下落のきっかけは、同日発表された1月の雇用統計で賃金上昇率が2.9%と、市場の予想を大きく越えて上昇したことです。これにより、10年債利回りが2.841%まで上昇しました。直近までゴーディロックスシナリオを前提として上昇が加速していた米国株式市場が冷や水を浴びせられた格好です。これまで景況感は一段と拡大すれども、物価が上昇しないからFRBは本気で引き締めをしないだろう⇒株式市場にとって最良な環境とマーケットは認識していました。10年債利回りは景況感、物価、FRBのスタンス等を総合したマーケットのリスク度のバロメータです。年初から上昇を続けていた10年債利回りですが、2.6%~2.7%で落ち着くだろうと想定されていました。長期金利が上昇しないと想定する背景は依然として低物価状況が続いていたからです(PCEコアデフレータは前年同月比1.52%上昇)。物価が上昇するルート は大きく2つ考えられます。一つは原油高です。WTI先物価格は世界的な景況感拡大を背景に年初の60ドル台から直近は65ドル台に上昇して物価上昇期待(懸念)を徐々に高めてきました。そしてもう一つが賃金上昇です。毎月の雇用統計では賃金上昇率に注目が集まりましたが、今までは前年比2.5%近辺で推移し、大きな上振れ現象は見られませんでした。ところが、今回の1月統計では2.9%上昇してマーケット参加者を驚かせることになりました。原油高等がインフレ期待(懸念)を徐々に大きくさせていたところに、想定外の賃金上昇が火をつけたことになります。短期的には楽観的ゴーディロックスシナリオが崩れた瞬間です。
*パウエルFRB新体制は発足当初から大きな試練と対峙することになりそうです。イエレン体制最後となった 1月31日のFOMCの声明文で、伸び悩んでいた物価は「今年は上向く」と指摘、政策金利については「さらなる段階的な利上げ」を予告しています。前回の会合から「さらなる」と言う文言が追加されたことになり、マーケットでは今年4回の利上げが想定されはじめています。しかし、パウエル新議長はトランプ大統領から「ハト派」として起用されたはずで、過度な利上げ継続による景況感の減速は避けたいところでしょう。また実体経済に先行して過度な金利上昇(10年債利回り)が「逆資産効果」(リスク資産、主に株価の大幅調整)をもたらすことが懸念されます。仮に、リーマンショック級の大型ショックが発生した場合、再生コストはリーマンショック時に比較して莫大となり、再生手段も極めて限定されます。おそらく、 FRB等、世界の中央銀行はマーケット参加者の認識以上に保守的な政策転換を模索するものと思われます。短期的にはゴーディロックスシナリオが修正される場面ですが、長期的にはゴーディロックスバイアスが強化されていく方向性に変化は無いと思います。今回の調整局面においては楽観論(特に短期的)を振りかざす必要はありませんが、悲観論は禁物です。
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