人材の多様化はいかに

2026/02/23 <>

・企業価値の評価に、人材の多様化をどのように織り込むか。投資家として外部からみる時、何を手掛かりとするのか。財務データをみても分からない。役員や管理職の顔ぶれをみても、すぐには分からない。女性管理職比率や外国人の構成をみても、それは参考になるが、効果を知ることはできない。

・アナリストとしては、会社の人々にできるだけ多く会い、さまざまな議論を通して、各々の人となり、それぞれの立場でのリーダーシップ、組織を動かす力、製品やサービスに関する戦略、戦術をみていくと、次第にその会社の人材力が分かってくる。

・生々しくみていく必要がある。人事異動がカギである。なぜ昇進したのか。次にどの部署に行ったのか。なぜ、そういう人事が行われたのか。トップの意向は人事に表れてくる。本当に実力があるのか。何らかの派閥的な動きなのか。少し長くみていくと分かってくることがある。

・しかし、こうした人材戦略を計量的に測ることは難しい。ポジションが人を育てるという面も強い。しかし、そのポジションの任務を果たせない人もいる。適材適所といきたいが、実際は期待とハズレの繰り返しである。

・能力があるとみたが、1つ上のポジションについてみると、力が発揮できない人も多い。率先垂範か神輿に乗っているだけか、自らの体験強調型か新規挑戦型か、さまざまな個性が出てくる。

・チーム力は大事だが、人には必ず好き嫌いがある。公平といっても、どこかで依怙贔屓が出かねない。それが、周りからみえてしまう上司も多い。これでは組織はまとまらないし、力は発揮されない。

・企業の発展ステージによって、求められる人材は変わってくる。一代で日本を代表する企業にのし上がったトップをみると、番頭的人材を大事にする反面、これまで貢献してきた人をドライに交替させていくことも目の当たりにしてきた。成長には次の人材が必要なのである。

・人材の流動化も、一般論として望ましい。自らの力をどこで発揮するか。新しいポジションで発揮できればよいが、社内でうまくいかない人が外でうまくいくとは限らない。

・社内でいかに人材を育成するか。ここに力を入れている企業の話を聞くのは楽しい。一方で、人材が定着しなくて困っているという会社は、社内に必ず問題がある。そこを聞き出して、どのように対応するのかを考えていく。

・なぜ女性の役員、管理職が少ないのか。なぜ男性の役員、管理職で、昭和のにおいのする古いタイプが多いのか。これでは会社が発展しないと思うが、トップはどう考えているのか。人材担当役員には、人材戦略をいかに変えようとしているのかを聞いていく。

・親会社、子会社での人事の仕組みや待遇の格差、海外子会社でも先進国と途上国での仕組みの違い、日本人中心をいかに脱皮していくか、などについて議論していく。

・働き甲斐と働き易さをいかに創っていくか。会社としては、定められた手続きをきちんと進める必要がある。ルーチン作業は必ずしも楽しくない。しかし、そこにいかにインセンティブを持ち込んでいくか。頑張ったら評価され、給与に反映されなくては面白くない。

・頑張って成果を上げた人には報いて当然である。結果として、差が付く。これが許容できるか。フェアな評価ならば、納得性も高いが、そうでないと不満が高まってくる。

・株式報酬制度も同じである。会社が成長しなければ、株式報酬の成果は目に見えない。役員だけの株式報酬では不十分で、社員全体に行き渡って、セイムボートであれば一体感も高まってこよう。

・人件費は費用ではない。人材投資のコストである。当然、人材投資のリターンを求めていく。ここの関係をいかに見える化していくか。社内の人事システムの一新と共に、外部の投資家への説明にも、分かり易さという点で力を入れてほしい。

・企業価値向上に貢献する人材の多様化を推進してほしい。競争力の強化に役立つダイバーシティ経営は容易ではない。多様化は結果なのか、戦略的先行投資なのか。つまり、有望な女性を先行的に活用して、それが価値創造により貢献しているということを、数年かけてみせていく必要がある。

・男性、女性、障害者、外国人の人材活用や育成に一段と力をいれる必要がある。育成に力をいれても、すぐ辞めてしまうので効果がないという声も聴くが、これは人材をリテンション(保持)できない会社の仕組みに問題がある。

・本当に人材を活用しているか。力が余っている人はいないか。十分なチャンスを与えているか。一定の成果に報いているか。誰かに手柄を横取りされていないか。こうして点を注意深くみていく必要がある。

・R&D、プロダクト開発、サービス開発、管理部門の充実に、人材の多様化は必須である。外部からの採用やスカウトも重要な方策である。内部だけでは、間に合わない場合の人材M&Aである。

・多様な人材を活用するには、互いを尊重し合い、チームとして一体で業務に取り組み、成果を分かち合うというカルチャーが問われる。自分たちだけ上手く立ち回ろう、という昔ながらの風習が残っている会社も多い。人の本性として、そうなりがちなところを打破していくマネジメントが求められる。

・人手不足に特に困っていない会社には、人材が集まってきている。人材が育っているので、チャンスを活かして事業を伸ばすことができる。こういう会社は頼もしい。よい会社は、社内のことをよく話してくれる。そういう会社の話を聞きながら、投資選別に人材多様化の視点を取り入れて、実践していきたい。

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