アクティビストは不愉快な投資家か
・東証が要請した「資本コストや株価を意識した経営」について、経営者はどのように感じたであろうか。明らかに意識がかわり、行動も変わった。しかし、そうでない企業も多いという印象を持つかもしれない。
・もともと企業価値に邁進しており、外人株主が多い企業は東証にいわれるまでもなく、そのような経営を推進している。それでもグローバル競争の中で、自社のポジショニングに四苦八苦している企業もあろう。
・上場維持基準に抵触している企業、あるいはボーダーラインに近い企業には火が付いた。基準をクリアして余裕をもつには、ROEを上げ、PERを上げ、PBRを高める必要がある。そのためには、従来型の経営とは一線を画して、大胆な手を打つ必要も出てきた。
・その大胆な手とは何だろうか。中期の成長戦略の加速なのか。バランスシート上の資本効率の向上なのか。バランスシートに載っていない「見えない資産」への大型投資であろうか。
・あるいは、やれるところからやるという小手先の戦術を小出しにしているだけであろうか。遊休資産の売却、余剰資金による増配や自社株買い、株主優待の強化、投資家説明会の開催回数の増加などであろうか。
・「資本コストや株価を意識した経営」を推進せよと要請された。まずは自社の資本コストを知る必要がある。同時に、同業他社やマーケットの資本コストも知る必要がある。これがなかなか腑に落ちないかもしれない。
・資本コストとは何か。これだけを単独で取り出し、理屈が分かっても、ピンとこないことも多い。企業は投資を続ける。そして、収益を上げて、儲けていかなければ、企業として存続できない。その時、最低いくら儲ければよいのか。資金の出し手には、このくらい儲けてほしいという要求水準がある。この期待収益率が資本コストである。
・株価を意識しない経営者はいないであろう。では、わが社の株価はいくらが妥当か。目標株価を定めて、それに向けて明示的なアクションをとる経営者はどのくらいいるだろうか。
・株価はマーケットが決めるもので、一企業では何ともならない、という見方が一般的であった。もっと実質をよく知って、しっかり評価してほしいが、投資家に分かってもらうのはなかなか難しい、と感じているかもしれない。でも、それでは経営者としては十分でない、と自覚する必要があろう。
・投資家は、経営トップに次のように質問してみれば、その経営者のレベルがすぐに分かる。PBR=ROE×PERであるが、①ROEはどのようにどこまで上げるのか。②PERは何倍が適正と考えているか、③PBRは算数ではROE×PERであるが、実はもう1つの独立変数してみる必要がある。では、そのPBRはどのように上げるか。
・これを短期ではなく、中長期的にどうみるか。ある意味でのデジタルツインである。経営者は、今の会社をリアルの経営している。それを資本市場では、同じ会社を資本市場に投射してみている。
・投射する時の尺度があって、その軸にそって測定できないと、デジタルツイン側の映像がぼけてしまう。ぼけてしまうと、投資家はその企業の価値がみえないので、投資対象とはならない。
・通常ぼけて見える会社には投資をしない。しかし、今はぼけているが、焦点を合わせようとする経営を行う姿勢がみえれば、投資家は株主となろう。
・焦点を簡単に合わせられるのに、それをやらない経営者がいる会社は、アクティビストに狙われる。こうすれば資本効率が上がる。ひいては株価も上昇する。でもやらないとすれば、大株主になって、強権を発動すれば、実現の可能性が高まる。それで儲けようという投資家がアクティビストである。
・アクティビストが入ってくることは、経営者にとって不愉快であろう。何らかの意味で、今の経営に文句をつける。そのやり方では問題があるといわれる。気分はよくない。
・ここからが力量が問われる。アクティビストの要求は、ほとんどがまともでないかもしれない。理不尽であっても、非合法ではない。合法的であっても、そこまでやるかという要求であることが多い。
・では、彼らの要求に馴染めない理由は何であろうか。取締役会の議事録を見せろ、社外取締役を入れろ、社長を交替せよ、事業を売却せよ、大幅増配をせよ、大量自社株買いをせよ、MBOせよ、合併せよ、と大胆なことを実行しようと法的対応に訴えてくる。大半が株主総会での戦いとなる。
・彼らにとって、要求は一種のネタであって、必ずしも実現しなくてよい。本気で実践しようと動いてくる。株主総会での株主提案を通して、賛否を問う。一般投資家の賛同が得られて、それが多数(過半や3分の2)を占めるならば議案として通ってしまう。通らなくても賛成の比率が10%、20%、30%となってくれば、それは現経営陣にとって無視しにくい。
・この間、マーケットで話題となって、アクティビストの動きが材料となって株が上がれば、それに乗ってくる投資家もいる。株が上がってくればしめたもので、どこかで売り抜ければ、それで儲けることができる。彼らは、がっちり儲かれば、それでよしと出ていくことも多い。アクティビストがいなくなれば、一件落着であろう。
・この騒ぎは何であったのか、ということになりかねない。やはり、今の企業経営に隙があったとみた方がよい。1)彼らに狙われそうなネタには十分備える必要がある。2)彼らのアクションには是々非々で丁寧ながら敢然と立ち向かう必要がある。3)普段からステークホルダーから一目おかれるような価値創造を実践する必要がある。
・価値創造に当たって、今のビジネスモデルが色あせているとすれば、次のビジネスモデルが輝くように、手を打つべきである。それができないなら、経営者は交替であろう。
・投資家は、投資を実行すれば、その会社の株主である。株主となったからには、中長期の目標を持ったアクティビストとして行動してほしい。会社によくなってもらい、株価を高めてほしい。
・一方で、企業は株主を選ぶ必要がある。自分たちに合わない株主には長居してほしくない。でも株主は全員アクティビストであるから、企業価値創造で成果を上げない限り、賛同は得られないであろう。
・アクティビストの視点で、変革を楽しむ投資家になりたい。大胆に変身できるような企業を見出して、そこに投資したいものである。