サステナビリティをどう評価するのか

2022/10/24 <>

・企業のサステナビリティ(持続性)について、どのように評価するか。自分なりのフレームワークを持っていないと、さまざまな議論についていけなくなる。

・企業経営者によって、3つのタイプがありそうだ。1つは、定められたフレームワークがあるなら、それに従えばよい。本業の本質に関わりがあるのならば、そこは本気で対応するが、通常の内容については、遅れないようにフォローしていけば十分である。

・2つ目は、また新しい規則が出されるのか。面倒だが対応すべきところは、それなりにやっていく。本業の邪魔にならないように、最小限の手を打っていけば十分である。

・3つ目は、もともと考えていたことがルールとして定められてくるだけである。とすれば、わが社の理念とビジョンを追求する中で、サステナビリティについて本気で実行していく。先頭を走ることによって、本業での独自性を一段と発揮することができる。

・ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)の公開草案が3月に出され、その理解もかなり進んできた。まずは、1)サステナビリティ関連財務情報の開示、2)気候関連の開示、3)産業別の開示について要求事項が出されている。

・財務情報に至る前の非財務情報、未財務情報について、その枠組みを提示している。企業価値のサステナビリティについて、①重要な情報(マテリアリティ)、②つながりのある情報(コネクティビティ)、③比較できる情報(コンパラビリティ)をしっかり見定める必要がある。

・サステナビリティのコア・コンテンツとして、1)モニタリングするためのガバナンス、2)リスクと機会に対応する戦略、3)それを識別するリスク管理、4)測定できる指標と目標を開示すること、が求められる。サステナビリティにとって、何が重大な(シグニフィカント)なリスクと機会なのか。それを評価するに当たって、重要性のある(マテリアルな)情報は何か、を特定していく。

・企業価値を生み出すビジネスモデルは、その機会とリスクが企業の外部と密接に結びついている。このバリューチューンを見通して、利用する資源(リソース)への依存とそのインパクトについて、関係性を的確に把握する必要がある。ここになると、かなりハードルが上がってくる。

・気候関連開示では、GHG(温室効果ガス)の排出について、気候変動がもたらす物理的リスク(直接的な損害や間接的な影響)を開示する必要がある。また、目的を達成するための移行リスクや投下資本、利用する内部炭素価格も求められる。リスクだけでなく機会や報酬についても知りたい項目となる。

・GHG排出量については、①スコープ1(自社の直接的排出)、②スコープ2(自社が外部から購入する間接的排出)、③スコープ3(上流の資本財やリース資産、下流の製品の加工や利用などさらに広範な排出)までも求められる。スコープ3を把握することは、かなり難しいが、そこまで求められようとしている。

・産業別の開示では、68業種について開示要求項目があげられている。消費財、サービス、金融、医療、エネルギー、テクノロジー、通信、採掘・鉱物加工、食品・飲料、インフラ、資源加工、輸送セクターである。

・国際会計基準(IASB)に加えて、これから国際サステナビリティ基準(ISSB)の議論が一段と進んで、いずれ基準が設定されてこよう。これを投資にどのように活用していくのか。

・ISSBのフレームワークをそのまま利用してもよいが、いかにも複雑すぎて頭の整理ができないようにも思える。筆者の場合は、シンプルに3つのステージに分けて、評価するようにしている。

・財務も非財務も統合的にみていきたいので、まずは企業が目指す、次のありたい価値創造の仕組み、つまり未来のビジネスモデル(BM2)をイメージする。パーパス、ビジョン、中長期の経営計画がベースとなる。このBM2が現在のビジネスモデル(BM1)に比べて、①どこが違っているのか、②何が足らないのか、③すでにできているところはどこか、をみていく。

・次に、第2のフェーズでは、BM2を実現するために、企業はどんな手を打っていくのか。そのやり方、戦略についてみていく。①何をやろうとしているのか、②できそうな内容か、③かなり無理があるのではないか、などその実行可能性を評価する。

・そして、第3のフェーズでは、BM2の実現に向けて、4つの軸から評価していく。サステナビリティ経営について、①経営者の経営能力は十分か、②機会を成長戦略として取り組んでいるか、③リスクをしっかりコントロールすべく手を打っているのか、④サステナビリティを支えるESGの基盤は十分構築されているか。

・こうした自分なりの評価フレームワークを持っていれば、サステナビリティの新しい制度やルールが作られて、個々の企業がレベルの違う対応を見せても、惑わされることは少なくなろう。変化を取り入れながら、自らの視点を絶えず見直していくこともできる。

・サステナビリティに関するISSBの動きは始まったばかりである。上場企業の温度差も大きい。企業価値創造に本当につながっていくか、という視点から注意深くフォローしていきたい。

株式会社日本ベル投資研究所
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