アフリカを身近に~やはり遠いか

2022/10/03 <>

・まだアフリカには行ったことがない。かつてパリに駐在していた頃、フランスの同僚は夏休みにアフリカを旅行していた。とても広大な大陸であるから気候も多様で、軽井沢のような避暑地も多い。

・8月に日本が主催するTICAD 8(ティカッド:アフリカ開発会議)がチュニジアで催された。3年に1回、アフリカと日本で交互に開かれる。今回は8回目であった。

・世界の人口増はこれからアフリカにシフトする。国連によると、2022年の世界人口80億人のうち、東アジア・東南アジアが23億人、中央アジア・南アジアが21億人と、双方で全体の55%を占める。このうち最も人口の多い中国、インド(各々14億人)とも、いずれピークアウトしてくる。

・一方、サハラ以南のアフリカは2050年までに、現状から倍増して20億人を超えてくる。2050年までのアフリカの人口増加では、ナイジェリア、コンゴ、エチオピア、タンザニア、エジプトなどが多い。

・ナイジェリアの人口は、現在(2022年推計)の2.1億人に対して、2050年には3.7億人へ増加する見通しである。コンゴも0.97億人が2.1億人に増加、エチオピアは1.2億人が2.1億人へ、タンザニアは0.6億人が1.2億人へ拡大する。エジプトは1.1億人が1.6億人に増加するが、南アは6000万人が7300万人とさほどでもない。

・出生率が高いからといって、経済が発展するわけではない。生活が成り立てば、高い出生率で人口は急増する。一方で、政治が安定せず、社会に一定の秩序がなければ、貧困と格差はどうしようもない。ナイジェリアやコンゴをみても、民度(「腐敗認識指数」は最下位クラスにある。

・雇用機会をいかに生み出すか。社会インフラを作っていけるか。TICADはアフリカの発展に向けて、ポジティブな活動を支援している。アフリカの人口14億人が2050年には25億人へ増加し、世界の4分の1を占めるようになる。その中で、デジタル革命とグリーン成長は確実に進む。通信、電力ビジネスは発展しよう。再生エネルギーも広がり、資源開発のポテンシャルもさらに高まってくる。

・アフリカへの進出企業は、中国(2500社)が最も多く、米国(2000社)、フランス(1000社強)、英国(1000社弱)と続く。日本企業は500社前後とまだ少ない。2020年のアフリカへの直接投資は、JETRO(ジェトロ)によると、英国650億ドル、米国480億ドル、中国430億ドルに対して、日本は48億ドルであった。

・アフリカ大陸は欧州が長らく支配した歴史を有するが、近年は中国が戦略的に進出を図ってきた。中国は進出国への支援を行う反面、債務の罠にはまるとインフラ施設を実質的にコントロールするような手法も使う。これは当事国にとって危うい。

・日本企業のアフリカ進出は遅れている。遠い、分からない、小さいというのが理由のようだ。この10年で日本企業のアフリカ拠点は2倍の900に増加したが、まだまだである。総合商社や自動車、機械関連メーカーが進出しているが、ビジネスとしてのウエイトはまだ極めて低い。ジェトロは、アフリカビジネスデスクを設け、アフリカビジネス協議会を作ってサポートしている。

・TICADのテーマは4つで、1)アフリカ企業との協業による社会課題解決へのイノベーション、2)アフリカの若者の人材高度化の支援、3)再生エネルギー、レアメタルなどのグリーン成長の実現、4)民間投資へのファイナンス支援である。

・平均年齢も若く、現在の20歳が2050年でも25歳である。まさに人口ボーナスが期待できる。アジアとアフリカをインド太平洋で繋ぐこともできる。アフリカは、太陽光、風力、地熱といった再生エネルギーの宝庫でもある。グリーン水素のポテンシャルもある。

・しかし、コロナ禍とウクライナ紛争の余波で、経済は悪化、財政難、投資資金不足にあえいでいる。食料不足も深刻になりつつある。1500万人が極貧状態に追い込まれている。

・アフリカの従来のイメージは資源国である。ダイヤモンドでは、ボツワナ、コンゴ、南ア、アンゴラ、ナミビア、ガーナが有力で、世界の半分を産出する。プラチナは、南アが世界の4分の3を産出する。コバルトは、コンゴ、サンビアで世界の半分以上を産出する。

・株式市場の規模でみると、南アが圧倒的に大きく、エジプト、モロッコ、ナイジェリア、ケニアなどが続く。よって、投資信託のアフリカファンドといっても、大半を南ア株が占める。これではおもしろくないように思えるが、その他の国ではまだ株式市場が育つほど経済発展が十分でない。

・今からの30年をどうみていくか。悲観的かつ慎重にみるだけでは、遠い、分からない、小さい、という認識のままである。人口ボーナスはどの国にもチャンスをもたらす。その中から企業家も育ってくる。政府間の支援だけでなく、民間企業のパートナーから、現地の企業も育ってこよう。

・社会インフラ事業では、太陽光、風力、地熱といった再生エネルギー、水道や灌漑といって公共事業、現地に根差した農産加工品などが有望である。通信インフラの整備につれ、ネットビジネスも人口増を反映してさらに急拡大が見込めよう。

・日本企業では、豊田通商をフォローしたい。アフリカ54カ国のすべてにネットワークを有し、卸売りから現地での製造にシフトしている。トヨタの英国系販売店の買収からスタートし、フランス系のアフリカ専門商社も買収した。その後もM&Aを活かしながら事業領域を広げている。

・今後とも日本企業のアフリカ開発、欧州企業のアフリカビジネス、南ア企業のサハラ以南への展開に注目したい。いずれアフリカ旅行にも出かけたいと思う。

株式会社日本ベル投資研究所
日本ベル投資研究所は「リスクマネジメントのできる投資家と企業家の創発」を目指して活動しています。足で稼いだ情報を一工夫して、皆様にお届けします。
本情報は投資家の参考情報の提供を目的として、株式会社日本ベル投資研究所が独自の視点から書いており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではありません。また、情報の正確性を保証するものでもありません。株式会社日本ベル投資研究所は、利用者が本情報を用いて行う投資判断の一切について責任を負うものではありません。