「価格(プライス)」と「価値(バリュー)」

今週の国内株式市場は比較的しっかりした展開が続いています。日経平均は月曜日に節目の17,000円台を回復してスタートし、翌日の火曜日には前日比350円超の大幅上昇を見せ、以降も上値は伸ばしきれないものの、17,200円台が値動きの中心となっています。

とりわけ、火曜日の一段高を演出したのは、今週最大の注目イベントであるECB(欧州中央銀行)理事会で国債の購入などの量的緩和が決定されるのではという観測が高まったことです。オランド仏大統領が「ECBは国債買い入れの決断をするだろう」と発言したのがきっかけになりました。欧州株は軒並み上昇し、独DAX指数は21日の取引終了時点で4日連続の最高値更新となっています。

市場では「量的緩和の決定ありき」のムードそのものが買い材料になっている格好で、株式の価格(プライス)が先行して上昇しているわけです。そのため、今後の株価の動向はECB理事会での決定内容やその後の余波など、実際の価値(バリュー)が、先行して上昇した価格に見合うのかどうかに左右されることになります。

この原稿を書いている時点ではまだECB理事会の結果は出ていませんが、量的緩和の決定自体は市場の共通観測になっていても、実際の緩和規模や買い入れ国債の対象範囲などは見方が分かれていますし、決定内容によっては失望される可能性があるほか、すでに金利が低下している状況下での緩和に効果があるのかといった疑問や、緩和マネーが米国債などに流れ、ドル高や米10年債利回りの低下をもたらすなどの影響も考えられます。さらに、そもそもECBが政治圧力に押し切られる格好となるため、決定そのものが見送られる可能性もゼロではありません。

こうした、価格と価値の関係を見極めることは投資全般における基本的な考え方です。普段の買い物でも、もちろん価格の高い・安いが重要な判断材料ではありますが、「買おうとしている商品が値段に見合う価値があるのか?」が前提になっているはずです。日本国内でも来週あたりから企業決算発表が本格化します。足元の国内株市場は企業業績期待が株価を支えている面がありますが、発表される業績内容や見通しが株価に見合う価値があるのかを見極めるという点では、ECB理事会での決定事項に対する観測で動いた今週の株式市場と本質的には同じと言えます。

 

 

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