テクノスデータサイエンス・エンジニアリング<7046> 多数のデータサイエンティストやエンジニアが在籍する技術者集団

2019/01/09

ビッグデータを活用したコンサルティングや AI 製商品の販売等を手掛ける
多数のデータサイエンティストやエンジニアが在籍する技術者集団

業種: サービス業
アナリスト: 大間知 淳

◆ ビッグデータ・コンサルティングやAI製商品の販売等を手掛ける
テクノスデータサイエンス・エンジニアリング(以下、同社)は、ビッグデータを活用したコンサルティングやAI製商品の販売等を手掛けている。18/3期末の従業員91名のうち、データサイエンティスト注1やエンジニアを中心とした技術者が60名を占めている。デジタルイノベーションを推進し、データ経営を目指す企業の業務改革や新事業の創造を支援することで、産業界の発展に貢献することを志向している。

同社は、ビッグデータ事業を開始するため、ERPソフトの導入支援等を展開するテクノスジャパン(3666東証一部)の完全子会社として、13年10月に設立された。テクノスジャパンは、18年11月時点で同社を持分法適用関連会社(出資比率43.3%)としている。同社は、上場前に公募増資や売出し(オーバーアロットメントによる売出しを含む)を実施したが、当面はテクノスジャパンによる持分法適用は維持される見通しである。

同社とテクノスジャパンの間で役職員の兼務はなく、同社の経営の独立性は保たれている。また、テクノスジャパン向けの取引額や比率は開示されていないが、取引が存在しているとしてもごく僅かと推測される。

同社の事業は、「ビッグデータ・AIソリューションサービス事業」の単一セグメントであるが、同社の提供するサービスは、「ビッグデータ・AIソリューションサービス」と「AI製品等によるロイヤリティサービス」に分類されている。

同社によると、ビッグデータ・AIソリューションサービスとAI製品等によるロイヤリティサービスの売上高構成比は、現状、概ね85%:15%となっている。

◆ ビッグデータ・AIソリューションサービス
同社は、データ経営を目指す企業に向け、データ経営コンサルティング、データ解析支援、データ活用人材教育及び組織組成支援、デジタル戦略システム構築等の総合的なソリューションサービスを提供している。

(1) データ経営コンサルティングサービス
顧客がビッグデータを活用し、経営課題が解決できるよう、上流のコンサルティング領域からアプローチし、データ経営の実現に向けた戦略立案を行い、課題と対策を明確にし、必要なノウハウを提供している。

(2) データ解析支援サービス
AI技術を保有する同社のデータサイエンティストが、データ経営コンサルティングによって抽出されたビジネス課題を把握した上で、数理課題に置き換えて分析し、結果をフィードバックしている。

(3) データ活用人材教育及び組織組成支援サービス
ビッグデータの活用人材や、経営者層に向けた教育プログラムを提供している。ビジネスへの活用から経営判断への応用に至るまで、データ分析の内製化を目指す企業に対し、組織組成を支援している。

(4) デジタル戦略システム構築サービス
顧客のシステム構想・企画支援を始め、セキュリティの強度等を考慮したプラットフォームを選定し、システムを設計している。ビッグデータ等の集計、可視化、分析、予測、最適化、シミュレーション等が可能な仕組みとなるよう、デジタル戦略システムの構築を支援している。

実際、同社の売上高は、技術者数の拡大に連動して増加基調で推移している(図表1)。

◆ AI製品等によるロイヤリティサービス
同社は、自社のAI製品である「scorobo」シリーズやAIモジュール注2、他社のAI製品等を提供している。AI製品等によるロイヤリティサービスは、個別企業に対応したプロジェクトではなく、自社や他社の製品の使用料や運用保守料を受領する形態であるため、ストック型の知識集約型ビジネスと位置付けられている。

(1) 自社AI製品等を活用したロイヤリティサービス
同社はディープラーニング注3技術等の機械学習等を活用した独自のAI製品「scorobo」を15年から提供している。現時点では、株価予想や経済指標予測を行うフィンテック領域向け製品「scorobo for Fintech」や、デジタルマーケティング領域向け製品「scorobo for Marketing」、「scorobo for SNS」を提供している。

(2)他社AI製品等を活用したロイヤリティサービス
同社は他社のAI製品を活用したサービスも展開している。具体的には、SAS Institute Japanが提供するデータ解析ソフトウェア製品群や、米国MIT(マサチューセッツ工科大学)のメディアラボから誕生したAI製品群「Netbase」、ChatBot注4や音声アシスタンス等の対話サービスに対して、自動応答機能を提供するAI製品「COGNIGY」が挙げられる。

Netbaseはツイッター等のソーシャルデータ分析サービスであり、同社は、14年9月にNetBase Solutions, Inc.と業務提携した。また、同社は、18年10月にドイツのベンチャー企業であるCognigy と業務提携した。

◆ リクルート等の取引先上位3社への依存度が高い
同社の取引先としては、リクルートホールディングス(6098東証一部)の連結子会社であるリクルート、アコム(8572東証一部)のタイ子会社であるEASY BUY PUBLIC COMPANY LIMITED、国立研究開発法人科学技術振興機構、クラシエホールディングス、フィスコ(3807東証JQG)、エヌ・ティ・ティ・データ(9613東証一部)、MS&ADインシュアランスグループホールディングス(8725東証一部)の連結子会社であるあいおいニッセイ同和損害保険、東京電力ホールディングス(9501東証一部)の連結子会社である東京電力パワーグリッド等が挙げられている。

中でも、リクルート(リクルートホールディングスが展開していたメディア&ソリューション事業を18年4月に承継)、EASY BUY PUBLIC COMPANY LIMITED、国立研究開発法人科学技術振興機構からなる上位3社への依存度が高く、その販売高を合計した金額は、18/3期及び19/3期第2四半期累計期間(以下、上期)の売上高の5割程度を占めている(図表2)。

◆ 金融やデジタルマーケティング等の領域を注力分野としている
同社は、様々な業界での解析経験やノウハウを有するデータサイエンティストとエンジニアを擁しており、以下の6つの領域を注力分野として挙げている。

① 金融
同社は、金融サービス構築支援に向けた与信解析、ビッグデータ解析を通じた新保険サービスの構築支援等において、金融機関やその関連企業との連携を進めている。具体的には、あいおいニッセイ同和損害保険とのテレマティクス注5分野での新サービス構築推進やデータ活用人材の教育支援を展開するほか、フィスコには株価予測AIや経済指標予測AI等を提供している。

② デジタルマーケティング
同社は、WEBやスマートフォンのアクセスログや、顧客の社内実績データ及びオープンデータ等の解析や、各種指標、経費最適化といったAIサービスを提供しており、リクルート等のデジタルマーケティングを推進する企業を支援している。

また、自社AI製品の「scorobo for Marketing」や「scorobo SNS」、NetBase Solutions, Inc.のAI製品「Netbase」を通じて、企業にソーシャルメディア分析サービスを提供している。

③ 健康医療
同社は、ヘルスケア企業に対し、サービスの高度化や新サービスの構築を支援している。具体的には、患者の体温や血圧、血中酸素濃度等のバイタルデータやレセプトデータ等の医療ビッグデータを活用した解析支援を行い、医療現場の効率化につながるサービス検証及び構築支援を行っている。

④ 社会インフラ
同社は、インフラ設備から得られるIoTデータ解析プロジェクトの支援や、故障予知を可能とするディープラーニング技術を活用したAI サービスの 構築を支援している。具体的には、東京電力パワーグリッドとディープラ ーニング技術を活用した架空送電線診断システムの共同開発が挙げら れる。今までは作業員が確認していたVTR による点検作業をAI が代替 し、異常検知の精度と点検作業の効率性の改善に寄与している。

⑤ 製造・工業
同社は、製造業の顧客に対し、データ解析による生産の効率化を支援しており、部品交換の最適化やコールセンターのコール履歴分析等60 種類以上の分析モデルを構築した実績を持つ。

⑥ 自動車
同社は、自動車メーカー、車両関連企業に対して、データ解析やAI サービス構築支援を通じて、自動運転・運転補助システム等の解析プロジェクトを支援している。また、世界的なGPU 注6 メーカーであるエヌビディア合同会社と技術連携を進めている。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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