フロンティア・マネジメント<7038> 大型案件の貢献等により、18年12月期の経常利益は8割増を見込む

2018/10/15

M&Aの助言や経営コンサルティング等の多様な経営支援サービスを展開
大型案件の貢献等により、18年12月期の経常利益は8割増を見込む

業種: サービス業
アナリスト: 大間知 淳

◆ M&Aの助言や経営コンサルティング等の経営支援サービスを展開
フロンティア・マネジメント(以下、同社)は、1)顧客企業の経営戦略の立案等を行う経営コンサルティング事業や、2)顧客企業が実施するM&Aに関する助言サービス等を提供するファイナンシャル・アドバイザリー事業、3)業績不振企業に対して各種支援を行う再生支援事業、4)調査業務、助言業務、資金支援業務等によって構成されるその他事業を展開している。

同社の創業者であり、代表取締役でもある大西正一郎氏(弁護士)と松岡真宏氏(元証券アナリスト)は、経営コンサルタント、産業アナリスト、事業会社出身者等のビジネスの専門家、投資銀行出身者等のM&Aの専門家、弁護士、公認会計士、税理士等の制度関連の専門家等、多様なバックグラウンドを持った専門家を一つのコンサルティングファームに集め、求められるニーズに合致したチームを編成し、多様な経営支援サービスをワンストップで提供することで、顧客企業の利便性を高められると考え、07年に同社を設立した。

二人の代表取締役が産業再生機構でカネボウやダイエー等の支援を経験していたことから、創業からの3~4年間は、事業再生事業が売上高の中心を占めていた。12年から景気が回復すると事業再生案件が減少したため、同社は上場中堅企業や地方中核企業等を対象とした経営コンサルティングやM&A助言サービスに経営の舵を切った。結果、近年では、経営コンサルティング事業とファイナンシャル・アドバイザリー事業が、それぞれ売上高の45%前後を占める主力事業となっている(図表1)。

経営コンサルティング事業では、顧客企業の経営戦略(全社戦略、事業戦略、機能別戦略(マーケティング、オペレーション等の企業の個別機能に対する戦略))の立案、中期経営計画の策定から実行支援、常駐型で実行支援を行う経営執行支援、M&Aに関連して実施されるデュー・ディリジェンス(事業等に関する調査・分析)等のサービスを提供している。

近年では、経営執行の多様化に対応するため、CEOやCFOを含むマネジメントチームを派遣する常駐型の経営執行支援サービスが拡大している。

対象とする業界としては、小売・流通、運輸、飲食、サービス、情報通信、テクノロジー、機械、素材、消費財、商社、医薬・ヘルスケア等が挙げられる。

企業とのパイプを持ち、10年以上の経験を有する産業アナリストやコンサルタント等、特定の業務分野に精通した専門家人材を採用し、そのナレッジ・ノウハウの共有化を進めることで、組織全体として顧客企業が属する業界に対する知見の深化や提供可能なソリューションの拡大に努めている。

ファイナンシャル・アドバイザリー事業では、顧客企業が行うM&Aや組織再編に関して、M&A戦略の立案、対象企業の選定・アプローチ、各種デュー・ディリジェンス(調査・分析)、企業価値算定、取引条件・契約書交渉、クロージング(資金決済等)手続きといった業務全般に関する助言・補佐業務を行っている。

特に、クロスボーダーM&Aについては、当該業務経験者の積極的な採用や、中国子会社の設立(11年)、シンガポール支店(12年)、ニューヨーク支店(17年)の開設、欧米やアジア等の海外提携先(約50社)の開拓等を通じて、その業務遂行体制の強化と海外ネットワークの拡充に努めている。

その他、事業承継を目的とするM&Aや、PMI(Post Merger Integration:M&A成立後の統合プロセス)支援業務に対するニーズに対応するための体制強化にも取り組んでいる。

再生支援事業では、支援を必要とする企業に対し、事業再生計画の策定から実行支援、金融機関との利害調整、経営改革(ターンアラウンド)のための経営参画、各種再生手続き上の支援までをトータルでサポートしている。

ターンアラウンド業務に精通したコンサルタントを顧客企業の経営陣等として派遣し、直接的に再生計画、経営改革の実行を支援するハンズオン(常駐)型経営改革支援を行っていることに特徴がある。

その他事業では、再生支援事業やファイナンシャル・アドバイザリー事業に関連し、弁護士、会計士及び税理士等の各種制度関連の専門家による調査業務(法務、財務及び税務面のデュー・ディリジェンス)を行う他、事業再生計画、M&A及び組織再編の実行局面において、当該制度関連の助言業務を行っている。

また、事業会社や金融機関の役職員を対象とした教育研修事業として「フロンティア・ビジネススクール」を16年から運営している。17年には、日本政策投資銀行とFCDパートナーズ(持分法適用会社)を設立し、ファンドによる資金支援業務を開始した。

同社は、弁護士、公認会計士、税理士等の士業の専門家や、経営コンサルタントや産業アナリスト、投資銀行出身者、事業会社出身者等をプロフェッショナル人材と定義している。18年8月1日時点でのプロフェッショナル人材のバックグラウンド別構成比は図表2の通りである。

◆ 固定報酬と成功報酬を併せ持つビジネスモデル
同社の売上高は、固定報酬部分と成功報酬部分によって構成されている。

経営コンサルティング事業については、通常、3カ月程度(場合により2カ月から12カ月程度の幅がある)のフェーズ毎、または月毎に固定報酬を受領している。

ファイナンシャル・アドバイザリー事業の中心を占めるM&A助言サービスの売上高は、主に固定報酬(着手金及び月額報酬)と、案件が成約した場合に受け取れる成功報酬によって構成されている。それぞれの報酬額は案件によって大きく異なり、特に、大型案件の成功報酬の多寡が同社全体の業績に大きな影響を与える構造となっている。

再生支援事業ついては、経営コンサルティング事業と同様に、通常、フェーズ毎または月毎に固定報酬を受領している。

費用面では、17/12期連結売上高の99%を占める単体決算の売上原価明細書によって、売上高に対する主要原価項目の比率をみると、労務費が27.8%(うち、給料及び手当が18.6%、賞与引当金繰入額が5.5%)、外注費が5.5%、地代家賃が2.1%、その他が3.9%、合計39.3%となっており、人件費が大きなウェートを占めている(連結の原価率は39.2%であるが、その内訳は開示されていない)。

販売費及び一般管理費(以下、販管費)についても、給料及び手当、賞与引当金繰入額、役員賞与引当金繰入額等の人件費が中心となっている。

人件費の中でも賞与引当金繰入額や役員賞与引当金繰入額は、業績連動部分が大きいと推測されるが、より比率が高い給料及び手当はほぼ固定費であると推測されるため、営業費用全体で見れば、固定費の比率が高いと証券リサーチセンターでは考えている。

>>続きはこちら(1.19 MB)

一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。