チームスピリット<4397> 経常損失が続いているものの18 年8 月期で経常黒字に浮上の計画
従業員の勤怠及び就業管理等を一つのシステムにまとめたクラウドサービスを提供
経常損失が続いているものの18 年8 月期で経常黒字に浮上の計画
業種: 情報・通信業
アナリスト: 松尾十作
◆ 従業員の業務管理を主体とするソフトウェアサービスを提供
チームスピリット(以下、同社)は、従業員の勤怠、就業管理、作業時間を表す工数の管理、経費精算、電子稟議、カレンダー、SNS のアプリケーションを一つのシステムにまとめた「TeamSpirit」を、SaaS 注1 で提供している。同社が提供しているサービスは、「TeamSpirit」の利用者単位で課金するライセンスと、顧客企業への「TeamSpirit」の導入支援サービスであるプロフェッショナルサービスに分類されている(図表1)。なお、ライセンスは、年間の契約金額を一括前払いで回収している。
「TeamSpirit」は、「勤怠、就業管理」の領域では従業員の出退勤時刻、有給休暇の取得状況、残業時間の推移、36(さぶろく)協定注2の抵触等、近年特にニーズの高い長時間労働の抑制や労働時間の管理を実現している。「工数管理・SNS」の領域では、従業員の働き方をリアルタイムで把握し、組織の中で群を抜いて高いパフォーマンスを示す人材(トップパフォーマー) の時間や経費の使い方を分析することで、他の従業員の生産性を向上させるための指導(コーチング)や気付きを提供している。
「TeamSpirit」は、米国salesforce.com, Inc.(以下、米セールスフォース社) が運営しているLightning Platform 上に構築されている。Lightning Platformとは、あらゆるデバイスでアクセス可能なPaaS注3 で、同社が提供しているサ ービスの基盤となるサーバーなどシステム機器の提供、情報セキュリティ対 策、バックアップなどの運用は、全て米セールスフォース社が担っている。 世界で認められている企業のサービスを利用していることで、同社自身は情 報セキュリティリスクから解放されている。
こうした機能を持ち、従業員の活性化及び生産性向上という働き方改革に関する本質的なソリューションを提供していることから、採用企業が増加傾向にある。
同社の販売経路は直接販売が中心で、見込み客への電話営業をせず、同社のWeb サイトで製品に対する見積りやデモンストレーションの依頼に対応した営業を展開している。
「TeamSpirit」の契約ライセンス数(人)は12/8 期末2,811 人から17/8 期末には98,900 人へ、契約社数は同様に34 社から795 社へと拡大している(図表2)。また、ライセンス数を契約社数で割った契約社当たりのライセンス数は、12/8 期末82.7 人から17/8 期末124.4 人、18 年5 月末では139.4 人と増加しており、社員数の多い企業との契約が増加基調にあることが読み取れる。
◆ 「TeamSpirit」の特色
勤怠管理や経費精算等のシステムは、人事部が担当する給与計算、経理部の行う財務会計等、企業の経営管理を司るERP注4などの基幹系システムのオプションとして従来は提供されていた。また、基幹系システムは月次での管理となっている。対して「TeamSpirit」は、前述の7 つのアプリケーションをひとつにまとめ、日々の活動データをリアルタイムで表示し、基幹系システムとのデータ共有が可能となっている。それにより、働く人の情報をトータルで収集・可視化できる。その情報を分析することで、業務の無駄をなくし、生産性の向上につなげることができる。
また「TeamSpirit」は、シングルソース・マルチテナント型(一つのシステム環境を複数企業で共同利用する形式)を採用することにより、全ての顧客が共通のソースコードで作られたアプリケーションを使用している。それにより、開発コストを抑えながら、顧客のフィードバックへの対応をしていくことで効率的に機能を改善・改良していくことができる。