SOU<9270> 独自のビジネスモデルによって高い資産効率を確立している

2018/03/27

一般消費者から買い取ったブランド品等を主に業者向けオークションを通じて販売
独自のビジネスモデルによって高い資産効率を確立している

業種: 卸売業
アナリスト: 大間知淳

◆ ブランド品等を中心としたリユース事業を展開
SOU(そう、以下、同社)は、バッグ等のブランド品、時計、宝飾品、貴金属、骨董・美術品を一般消費者から買い取り、商品の種類や特性に応じて異なる販路で販売するリユース事業を展開している。ブランド品、時計、宝飾品の販売については主に自社グループで運営する業者向けオークションを用いている。また、貴金属や骨董・美術品についても業者への卸販売が主体となっている一方、一部のブランド品等については一般消費者への小売販売も行っている。

同社グループは、同社及び、STAR BUYERS LIMITED、マーケットインサイト、古美術八光堂の連結子会社3社によって構成されている。同社がブランド品、時計、宝飾品、貴金属の買取、販売(国内自社運営の業者向けオークション、業者向け卸販売、一般消費者向け小売販売)を、STAR BUYERS LIMITEDが香港でのオークション開催や取引業者の開拓を、マーケットインサイトが商品の仕入れ・販売に関する取引データを利用した商品管理システムやアプリの開発・改修を、古美術八光堂が骨董・美術品の買取と業者向け卸販売(国内他社運営オークションへの出品等)を行っている。

同社グループは、「ブランド品、骨董・美術品等リユース事業」の単一セグメントで運営されていることから、セグメント毎の業績は開示されていない。事業内容については、リユース商品の仕入れと販売に分けた情報開示が行われている。

(1) 商品仕入れ(店頭・宅配・出張買取)
同社は、ブランド品、時計、貴金属、地金、宝石、骨董品、美術品などのリユース品を主要な取扱商品とし、中でも販売時に50,000円以上の単価を見込めるものを仕入れの主体としている。買取方法には、店頭買取、宅配買取、出張買取が存在する。

店頭買取は、入店しやすい店舗デザインや接客スタイルで国内に38店(17/8期末)を展開する「なんぼや」、電話やインターネットで予約が出来るブラント品等の買取専門店として国内百貨店内などのビル内に6店(同)を展開する「BRAND CONCIER(ブランド コンシェル)」(以上は同社が運営)、連結子会社である古美術八光堂が運営し、主に骨董品や古美術品、現代美術品を取り扱う買取専門店として国内に8店(同)を展開する「古美術八光堂」によって実施されている。

売却したい商品を一般消費者(個人)が同社の店舗に持ち込むと、同社のバイヤー(コンシェルジュ、鑑定士とも呼ばれているが、以下、バイヤーに統一)が鑑定・査定を実施し、その場で買取が行われる。

宅配買取では、売却したい商品を個人が同社店舗に宅配便で送ると、同社のバイヤーが鑑定・査定を実施し、買取金額をメールや電話等で連絡する。買取不成立の場合は商品を返送している。

出張買取では、持ち運びや発送が困難な売却希望商品を持つ個人の自宅に同社のバイヤーが訪問し、鑑定・査定、買取を行っている。

集客のための広告宣伝は、主として各店舗のWEBサイトやWEB広告を活用しており、商品仕入れ点数の約99%が上記3種類の買取方法を利用する個人からの買取によるものとなっている。

マーケットインサイトは、各店舗で収集された仕入商品や買取情報のデータを利用して、商品管理システムを開発、改修している。商品開発システムは、商品買取時の鑑定・査定時間の短縮や値付け精度の向上に活用されるほか、商品販売時のオークションにおいての価格推移分析や販売価格設定にも利用されている。

(2) 商品販売
仕入商品は、同社及びSTAR BUYERS LIMITEDが運営する業者向けオークションを主な販路とするが、その他の卸販売形態(国内他社が運営するオークションや市場、海外での展示会等)によっても国内外で販売されており、販売点数における卸販売の割合は約93%に達している。残りの約7%は同社が運営する小売店とECサイトを通じた個人への小売販売である。

(業者向けオークションでの卸販売)
同社とSTAR BUYERS LIMITEDが業者向けに運営する「STAR BUYERS AUCTION」(国内、香港合計)による売上高の割合は約63%(17/8期)に達している。

同社は、東京都港区の本社内にあるオークション会場において毎月4日間、オークションを開催しており、17/8期では月間で16,000点以上の商品が出品され、15,000点以上が落札された(落札率95.8%)。

STAR BUYERS LIMITEDは、香港において、ダイヤモンド、メレダイヤ(0.1カラット以下の小さなダイヤモンド)を対象としたオークションを17年3月に開始しており、18/8期第1四半期末までに4回開催した。

(国内他社市場での卸販売)
主に古美術八光堂で仕入れる骨董品・美術品は、商品特性や自社オークションの顧客属性を考慮し、STAR BUYERS AUCTIONではなく、他社運営の骨董品・美術品オークションや市場で卸販売されている。

(海外での展示会参加等による卸販売)
同社で仕入れた時計や宝飾類の一部の商品は、STAR BUYERS LIMITEDを通じて、主に香港で開催される時計・宝飾展で卸販売されている。

(その他の卸販売)
金やプラチナなどの貴金属・地金は、専門業者へ卸販売されている。

(店舗・ECサイトでの小売販売)
国内の一般消費者やインバウンド旅行客をターゲットとした小売販売は、16年1月、関西国際空港に近接した複合商業施設内に「ZIPANG(ジパング)」を開設したことを契機に始まった。ZIPANGの客層は家族連れや若者が多いため、比較的購入しやすい商品の品揃えが多く、販売平均単価は約3万円である。

16年10月、海外高級ブランド品の直営店が数多く出店している東京都銀座に出店した「ALLU(アリュー)」においては、ヴィンテージ品、アンティーク品を中心にラインナップしており、販売平均単価は約20万円である。

また、店頭の商品をインターネット上で購入できるECサイトも開設されている。

(主要顧客への販売実績)
同社の主要販路であるオークションにおいては、販売実績が総売上高の10%を上回る大口顧客は16/8期及び17/8期においては存在していない。一方、金やプラチナなどの貴金属・地金については、専門業者への卸販売を主体としているため、特定の大口取引先との関係が深くなっている。

16/8期、17/8期、18/8期第1四半期において、貴金属、宝飾品、ブランド時計の総合商社である株式会社ネットジャパン(非上場、本社東京都)が販売先上位顧客に挙がっている。18/8期第1四半期においては、貴金属の売買やリサイクルを手掛ける日本マテリアル株式会社(非上場、本社東京都)との取引額も総売上高の10%を超えている(図表1)。

(3) 資産管理アプリの運営
同社は、マーケットインサイトが開発した資産管理アプリ「miney(マイニ―)」の運営を17年10月から開始した。利用者は、時計やバッグ、ジュエリーなどの所持品を登録すると、その商品の参考買取価格や、同じ商品の過去からの買取価格推移を閲覧できるほか、mineyを通じて宅配買取を依頼できる。mineyは、同社の小売店舗を利用したことがない他社顧客や、まだリユース品を利用したことがない潜在顧客を獲得するための有力なツールとして位置付けられている。

◆ 独自のビジネスモデルによって高い資産効率を確立している
ブランド品等のリユース事業は、自社生産や安定的な仕入先からの調達に基づくものではなく、通常、販売先も一部を除いて継続的な取引関係があるわけではないため、フロー型のビジネスであると位置付けられる。

ブランド品等の中古品は、新品市場におけるニューモデルの発売や、経年劣化に伴う品質の低下などを要因として、時間の経過によって商品価値(中古品価格)が目減り(下落)する傾向があるため、リユース事業者には仕入れた商品を短期間で売り切る力(棚卸資産回転率の維持・向上)が求められている。

同社は、売れる商品を目標とする利幅を確保できる水準で買い取り、毎月開催する業者向けオークションを主力販路として短期で売り切るという独自のビジネスモデルを構築しており、このことが高い資産効率に繋がっている。結果、17/8期における同社の棚卸資産回転率(売上原価÷期中平均棚卸資産)は5.7回、総資産回転率(売上高÷期中平均総資産)は2.6回に達しており、小売販売を中心とする多くの同業他社よりも高い水準となっている。

同社の売上原価は、一般消費者から買い取った商品の仕入コスト(変動費)によって構成され、17/8期の原価率は70.6%に達している。業者への販売が主体であるため、小売マージンを獲得出来ていないものの、高額品の取り扱いに注力することで、卸売業としてみれば高い売上総利益率を確保している。

一方、販売費及び一般管理費(以下、販管費)については、給与及び賞与や、地代家賃など、店舗の運営費を中心とした固定費が中心である。従業員一人当たり売上高を高めることで、販管費率の抑制、改善に努めている。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
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