ミライロ(335A)ミライロIDが利用できる導入事業者とミライロIDユーザーの拡大で成長を目指す
デジタル障害者手帳ミライロIDの発行等、障害者を支える各種サービスを提供
ミライロIDが利用できる導入事業者とミライロIDユーザーの拡大で成長を目指す
業種:情報・通信業
アナリスト:鎌田良彦
◆ デジタル障害者手帳の発行等、障害者を支えるサービスを提供
ミライロ(以下、同社)は、障害者にとっての社会的障壁を取り除き、障害者が安心して快適な生活を送れるバリューに転換する「バリアバリュー」を企業理念に、そのためのインフラ構築や各種ソリューションとサービスの提供を行っている。
同社はバリアバリュー事業の単一セグメントであるが、以下の3つのサービスを提供している。
① スマートフォンアプリのデジタル障害者手帳「ミライロID」を障害者に無償で発行し、ミライロIDユーザーを対象にした各種ソリューションとサービスを企業向けに提供する「ミライロIDソリューション」
② 障害者等の多様な人との向き合い方を同社はユニバーサルマナーと定義し、障害者が講師となり実施する「ユニバーサルマナー研修及び検定」
③ 手話通訳サービス等を提供する「コミュニケーションサポート」
24/9期の売上高構成比は、ミライロIDソリューションが33.6%、ユニバーサルマナー研修及び検定が42.0%、コミュニケーションサポートが24.3%であった(図表1)。
24/9期末の顧客数は561社で、顧客数ではユニバーサルマナー研修の受講企業が多い。
◆ デジタル障害者手帳「ミライロID」
ミライロIDは、19年7月に提供を開始した障害者向けのスマートフォンアプリで、各自治体が発行する障害者手帳の本人証明画像や支援が必要な項目等の情報を登録し、デジタル障害者手帳としたもので、障害者からの申請に基づき無償で発行している。
24年末のミライロIDのユーザー数は43.5万人で、うち障害者手帳所持者は約32万人となっている。鉄道会社をはじめとした交通機関、美術館・博物館・レジャー施設等の障害者割引を提供する施設等で障害者手帳の現物の代わりに、スマートフォン上の「ミライロID」画面の提示により障害者割引の適用を受けることが可能となっている。障害者手帳保持者以外のユーザーは、割引価格等は適用されないが、施設や店舗のバリアフリー情報の利用やオンラインショップでの定価での購入等ができる。
障害者向けに割引価格や各種サービス等を提供する事業会社や施設、自治体等の事業者のうち、ミライロIDを障害者手帳の代わりとして利用することを認めているミライロIDの導入事業者数は24年末で4,094事業者に達している。導入事業者には、ミライロIDユーザーに各種のサービスを提供するミライロIDソリューションの顧客企業も含まれる。
ミライロIDが20年6月にマイナポータルと連携したことにより信頼性を高め、JR各社を始めとする鉄道事業者での採用等により導入事業者が増え、それに伴いミライロIDのユーザーも拡大してきた。
◆ ミライロIDソリューション
ミライロIDソリューションは、ミライロIDユーザーに対する企業の各種のサービス提供と、ミライロIDユーザーを対象としたリサーチや専門人材による各種ソリューションからなり、収益は企業から得ている。24/9期末のミライロIDソリューションの顧客数は192社で、顧客数としては後述する各種サービスを提供する会社が多い。
1) ミライロIDユーザー向けの各種サービス
ミライロIDユーザーを対象とした企業による各種サービスとしては、広告配信、クーポンの提供、オンラインでの製品やチケットの販売、施設や店舗のバリアフリー情報の提供、API注1連携によるミライロIDユーザー情報の提供に基づくシステムの開発と提供等がある(図表2)。
ミライロIDユーザー情報のAPI連携の事例としては、アマノ(6436東証プライム)の子会社で駐車場運営を行うアマノマネジメントサービスとの連携による駐車場の障害者向け割引の自動精算システムがある。全国100カ所以上の駐車場での利用が可能で、障害者は精算機にミライロIDのQRコードを読み込ませることで割引が適用され、駐車場側は係員による障害者手帳の本人確認作業が不要となる等、双方にメリットがある。
2) ミライロIDユーザーや専門人材を活用した各種ソリューション
ミライロIDユーザーや同社の専門人材を活用した各種ソリューションとしては、ミライロIDユーザー等を対象にアンケートやインタビューを行うミライロ・リサーチ、専門人材によるサービスとしては、企業の障害者対応の改善点を提案するミライロ・サーベイ、施設のバリアフリー化に向けた調査等を行うミライロ・アーキテクチャー、ユニバーサルデザイン対応のマニュアルやガイドブックの制作等を行うミライロ・クリエイティブがある(図表3)。
◆ ユニバーサルマナー研修及び検定
同社は、障害者、高齢者、LGBTQ+注2等の多様な人々との向き合い方を障害のある当事者が講師を務めるユニバーサルマナー研修及び検定を会場開催、オンライン開催、eラーニングにより、法人、及び個人向けに実施している。法人顧客の約6割は継続的にユニバーサルマナー研修を受講している。
検定はユニバーサルマナー検定1級から3級までがある。1級と2級は受講及び試験あるいはレポート提出が課され合格者のみが認定され、3級は受講のみで取得できる。資格認定は同社の非連結子会社の日本ユニバーサルマナー協会が行っている。
◆ コミュニケーションサポート
コミュニケーションサポートでは、聴覚や発話に困難のある聴覚障害者等に向けた情報保障サービス「ミライロ・コネクト」を提供している。
ミライロ・コネクトでは、企業や自治体に向けた遠隔手話通訳サービス、オンラインで通訳オペレーターが手話通訳を行う手話リレーサービス、手話・文字通訳派遣に加え、電話リレーサービス注3のオペレーター業務の受託、手話オンライン講座「ミライロ・コネクトClub」を行っている。

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